「これならシュリンクラベルの方がよくないか?」という声もあった。確かにそう思える節もある。特にPerivallo360mがワインボトルの肩から首まで全面印刷する姿を想像すると、同じくボトルの全域をメディアとして使用できるシュリンクスリーブが最初に頭に浮かぶ。シュリンクは複雑な容器形状を全面加飾するという意味では、既に成熟した技術である。
DTOとシュリンクスリーブは、どこで棲み分けるのか
「シュリンク=大量生産、DTO=小ロット」と単純に分けるのも正しくない。シュリンクスリーブもデジタル印刷を使えば小ロット化できる。ただし水性インクジェットでは、フィルム上の水を蒸発させるために相当量の熱と風が必要になる。PETG、OPS、PVCなどのシュリンクフィルムは熱によって収縮することを目的に作られた基材であり、乾燥工程そのものが寸法変化を起こす危険がある。乾燥温度とウェブ張力による熱伸縮を抑えながら、見当と製品寸法を維持することが技術課題となる。確かにUVインクジェットならLED UVによって瞬時に硬化できるため、水性インクジェットのような大規模な熱乾燥を必要としない。この点では熱に敏感なシュリンクフィルムとの相性はよい。しかし問題は、その後のシュリンク工程である。一般的なUV硬化膜は大きな収縮に追従しにくく、収縮率やインク膜厚によっては割れや密着不良を起こす。このためシュリンク用途には高い伸長性を持つ専用インクが必要となり、対応できるシステムは限られる。したがって、シュリンクスリーブをデジタル印刷で安定生産するには、インクの伸長性、基材の耐熱性、乾燥・硬化条件まで含めた専用設計が必要になる。対応システムの選択肢が限られることは、シュリンクの小ロット化にとって一つの制約であり、LSINCのようなDTOにとっては市場機会となる。
これはデジタル印刷を推進する我々PODiとしては、言ってみれば片手落ちの敗北宣言に等しい。各軟包装デジタル印刷機メーカーの奮起を期待したい。
PeriQ360の面白さは「4本とも違う絵柄」でよい
一方、PeriQ360にはシュリンクと決定的に違う特徴がある。
4本を同時に印刷する際には、それぞれの形状は同じでなければならないが、絵柄は可変である。これはDTOとVariable Dataの組み合わせとして非常に面白い。例えばホテル向けのミネラルウォーターを100本作るとすると:
一本ごとに宿泊客の名前を変える。
イベント参加者100人すべて違うデザインにする。
同じワインを4地域向けに違う表示で作る。
限定100本をすべて異なる番号で印刷する。
こうした仕事でも、PeriQ360は並列処理ができる。通常の「4連機」は同じ物を4個ずつ作る。PeriQ360では、同じ形の物を、違う絵柄で4個ずつ作れる。
ここがデジタルなのである。シュリンクスリーブでもデジタル印刷なら可変画像は理論上可能だが、スリーブ製袋→ 装着→ シュリンクという工程が残る。
一本ごとに画像もボトルも違えば、「正しいスリーブを正しいボトルへ装着する」ためのトラッキングも必要になる。DTOならボトルそのものへ直接Variable Dataを書くため、この照合作業が存在しない。ここには明確な差がある。
結局、どちらが勝つのか
単一デザインを多数作るなら、既存のラベルやシュリンクスリーブは依然として強い。全面加飾というだけでは、Perivallo360mの優位性にはならない。
逆に、数十本、数百本の小ロット、頻繁なSKU変更、地域別商品、限定デザイン、シリアル番号、パーソナライゼーション、そしてMulti-Layerによる盛り上げや透明素材の表裏表現、となるほどDTOが面白くなる。つまりLSINCが狙うべきなのは、単なる「ラベルレス」ではない。ラベルやシュリンクを無くすことではなく、それらを使った工程では面倒だった仕事を簡単にすること。
特にPeriQ360の「同形状4本・異画像同時印刷」は、その境界をかなり小ロット側へ押し広げている。
DTOとシュリンクの勝負は、ロット数、SKU数、可変率、後加工、在庫、照合、装着工程まで含めたトータルワークフローで判断すべきなのだろう。
環境性能と循環性という、もう一つの違い
シュリンクは当然であるが、印刷されたラベルが必要である。ボトルに直接描画するDTOは、ラベルそのものを必要としない。材料点数と工程数だけを見れば、環境性能でもDTOに軍配が上がりそうに見える。
しかしそう簡単ではない。DTOとシュリンクスリーブを比較すると、もう一つ無視できない違いがある。ボトルのリサイクルとリユースである。シュリンクスリーブは、適切に設計すれば使用後に容器から分離できる。ミシン目に沿って剥がせばよい。PETボトルの場合、スリーブを剥がす、あるいはリサイクル工程で分離できれば、ボトル本体には印刷インクが残らない。高品質な透明rPETへ戻すというBottle-to-Bottleの思想とも相性がよい。
一方、DTOでは容器本体へUVインクを直接硬化させる。現在一般的なPETボトルの再商品化工程には、この硬化インク膜を除去する脱墨工程はない。したがって透明PETへの直接印刷は、高品質なBottle-to-Bottleリサイクルという観点では大きな課題を残す。
これはリユースではさらに明瞭になる。シュリンクなら、使用済みのスリーブを剥がし、容器を洗浄して新しいスリーブを装着できる。DTOでは、再使用前に硬化した印刷層そのものを除去しなければならない。
ガラスには二つの循環がある。
ワンウェイびん
→ 回収 → カレット → 高温溶融 → 新しいガラス
→ UV直接印刷でも比較的問題は小さい
リターナブルびん
→ 回収 → 洗浄 → 再充填 → 再使用
→ DTOによる恒久的なUV印刷は問題になり得る
後者が日本では使用量ベースで約3割存在する。ここはシュリンクの強みが非常に明確になる。
| シュリンク | LSINC等のUV DTO | |
|---|---|---|
| ガラス・ワンウェイ | ○ | ○ |
| ガラス・リサイクル | ○ | ○〜△ |
| ガラス・リユース | ◎ 剥がして交換 | △ 印刷除去が必要 |
| PET Bottle-to-Bottle | ○ 分離できれば有利 | △〜× 脱墨が課題 |
| 多品種小ロット | △〜○ | ◎ |
| 1本ごとの可変印刷 | △ | ◎ |
| 厚盛り・テクスチャ | △ | ◎ |
| 後加工 | 装着+収縮が必要 | ほぼ不要 |
もちろん技術は動いている。PETリサイクル工程の洗浄時だけインクを剥離させるDirect Print用インクの開発も始まっている。将来、LSINCのようなDTOにもWash-off、あるいはDeinkable Inkが実用化されれば、この評価は変わる。
現時点では、シュリンクには「後工程が多い」という弱点があり、DTOには「容器にインクを残す」という弱点がある。
どちらが優れているかではない。大量生産、循環性、リユースを優先するのか。あるいは超小ロット、Variable Data、在庫レス、Multi-Layerによる高付加価値加飾を優先するのか。最終的には、印刷単価だけではなく、容器の製造から使用、回収、再生までを含めたライフサイクル全体で判断する必要がある。



