包装産業もIoT, AI, ロボット、ファクトリーオートメーションが進む
SDGs, プラスチックのケミカルリサイクルに対応しているところに、Covid-19 pandemicが起こり世の中の動きが変わってきている。人手不足、働き方改革、人々の人生観の変化などパラダイムシフトが進行しつつある。このような中で包装のビジネスはどのようになるか。コロナウイルスで最も影響を受けなかった印刷業は包装である。その他の印刷物は軒並みダウンである。何が起こるか分からない予測できない状況がしばらく続くだろう。これからの包装ビジネスは、いまや世界のほとんどの地域でそれなりの包装材料、充填包装機、食品保存技術が実施できるので、しばらくの間、グローバルサプライではなく地産地消の傾向が強くなる。包装材料を世界に供給する必要性は薄れてきている。包装はその地域の文化を表しているので、その地域でそれなりのものが製造されるだろう。
先進国は何をするかであるが、包装は生活に必須のものであり、裕福になり、包装製品も個人への対応が必要となってきている。その結果、変化が早く、小ロット対応、短納期対応が求められてきた。まさにデジタル印刷にとっては追い風である。モノの製造は、無人化、協働ロボット、遠隔操作、ロス削減など技能工に依存的な製造法から誰でも操作できるデジタル化製造へと移行しつつある。稼働状況の最適管理など実施され納期対応も今以上に楽になるだろう。包装人もいつまでも、過去の価値観にこだわっていられない。New Normalにおける包装への対応が求められている。New NormalはいつしかNormalとなり、当たり前の包装となる。その時点で、また新しいnext generationの包装が求められる。現在の過渡期において、IoT, AI, ロボット、ファクトリーオートメーションが包装産業にも浸透してきている。我々も遅れずに対応を図るだろう。
AI及びロボットの活用事例
- チーズの充填包装ラインで、1分間540個のチーズをAIで検査し、検査人員を24人から4人に削減した省人化の事例がある。カメラ8台と特殊照明16台、GPU搭載のエッジコンピュータ4台、位置検出センサー8台、エアーによる排出装置4台、制御用コンピュータ1台、制御用タッチパネル1台という構成で充てん包装機4列に組み合わせて設置。人手不足、熟練工引退への対応はこのような方法で対応せざるを得ない。
- バラ積み状態の対象物を1分間に90個以上仕分けられるピッキング装置。部品の仕分け・組み立てラインへの投入、充填機への投入前の整列を行う。人手不要で人は単純労働作業から別の仕事へと変わる。
- 食品業界向けの協働ロボットの販売開始。ロボットの表面に特殊なメッキ処理、ロボット全体が洗浄できる。充填包装機と同じようにCIP洗浄の考えがロボットの洗浄適性へと発展してくる。
- 充填包装機に高性能AI搭載。ピッキングロボット、対象物を空気の力で掴む、軟らかい食品にも適した非接触ハンド(特許申請中)を開発。ハンドリング技術が向上し取扱い対象品目が拡大していく。食品生産ラインへのロボット導入は、クリーン性維持の面からも有利である。
- IoTを融合させ、スマートグラスに包装機械運転状況を表示できる新しい生産管理。メンテナンス性及びサービスを提案。包装機の各種センサー及びカメラをインターネットにて機械メーカーの管理システムと常時接続し、予防保守、リモート保守を可能にした。遠隔操作(リモート制御)は急速に発展し、機械の設置、試運転、本格稼働もリモートで可能になっている。(例:イタリアのPETボトル成形充填機の納入)
- 熟練作業者2名で行っていた毎時1800個~2000個のサンドイッチカットと袋詰め工程を、ロボットを用いて無人化。人手不足、単純労働作業の代替、クリーン性維持に有利で食品のシェルフライフ延長にもつながる。
- パッケージ製造の生産工程に、生産管理業務の効率化を図るためのIoTを導入し、見える化により効率アップ。各工程でタブレットを使用し作業前後に押すだけで基盤システム上に進捗状況がリアルタイムで反映され入力作業が省力化できた。また、どこでもリアルタイムに生産状況を確認できる。
- 無菌充填豆腐の常温販売が解禁となり、AIの画像認識技術と学習判断能力で豆腐に特化した自動検品やコンパクトな自動取り上げロボット「自動検品取上げ装置」を導入。容器やパック水が影響して目視検査以外は難しかった豆腐の割れ欠け不良パターンの自動判定が出来るようになった。省人化及び熟練工の代替。
- IoTで欠陥データを収集しAIで分析してディープラーニングによりAI予測が出来る。欠陥条件として、髪の毛、ピンホール、虫を入力設定すると検出時に分別する。インターネト経由で顧客に設置した機械のトラブル発生時に検査装置の状態を確認出来る。作業員が現地に行かないリモート制御が発展する。
ドイツのシーメンス、デジタル工場総本山では、デジタル化で生産量を1.4倍に伸ばしたと言われている。現在、自動化率は75%を超え、従業員は、現場の機械についているのでななく、工場内でモニターを見て、必要に応じ機械のところに行き段取り換えや資材の補給している。製品1個ごとに製造工程までさかのぼり履歴を確認できる。包装製造ラインや食品などの充填包装ラインもこのようになるだろう。日本においても包装材料もこのように一部はなっている。プラットフォーム構築でスマートな包材製造及び食品などの充填包装が近い将来行われるようになるだろう。これには基礎データが必要である。データ化し利用できる準備をしたい。包装産業も製造法がデジタル化の影響を受け変貌している。
次号に続く
著者紹介
住本技術士事務所 所長 住本充弘(すみもとみつひろ)
技術士(経営工学)、包装管理士((社)日本包装技術協会認定)
日本包装コンサルタント協会会員・理事
技術士包装物流グループ会員・理事
日本包装学会会員