新しい印刷の役割
ではこちらをご覧頂きたい。
Restoration Hardware社のカタログである。同社は北米に多店舗展開している家具屋なのでWeb専業ではないが、Webとカタログに大きな投資をして成功している。もちろんこれらは紙のカタログとして、店舗で配布され、得意先に配達されている。ご覧頂いた通り、写真以外ほとんど何もない。伝えたいのは「ブランドイメージ」と「カッコイイ! 欲しい!という閃き」のみ。
是非、リンク先をご覧いただきたい。カーソルを写真の上に乗せると、ある所では拡大機能を示すレンズに、ある所ではリンクを示す矢印になる。これは同社の取扱商品であって、顧客が購入可能であることを示す。矢印をクリックすると、商品ページに飛ぶ。ここで初めて商品写真、説明、スペック、顧客の選択肢、価格等が表示される。
つまり紙の印刷カタログではあるが、これだけでは購買に辿り着かない。単独で成立しておらず、補完情報が必要なのだ。紙なのでいくら押してもリンク先に飛びはしない。このカタログの目的は、「ブランドイメージと閃きで読者を、PCの、あるいはスマホの、このページに連れてくる事」なのだ。顧客体験の設定が誌面で完結するのではなく、従って網羅性も説明力も要求されていない。従来のカタログ組版の能力、知識は必要ないのだ。「カッコよさ」「欲しいと思わせる力」のみである。これがデジタル時代の印刷の役割である。表現するクリエイティブの力、人を惹きつけるデザイン、そして印刷、紙、製本がもたらす現実感こそ決め手である。
すなわち前述の四条件に加えて
5.デジタルでは叶わない、人を魅了するデザインと仕上がり(印刷、紙、製本全て)
が必要なのだ。
(続く)
著者プロフィール
社団法人PODi 代表理事 亀井雅彦(かめいまさひこ) デジタル印刷活用をテーマに、印刷機メーカーや印刷会社に対して、人材の育成および教育・コンサルティングサービスや各種普及啓発活動、イベント、セミナーの開催を実施。 |