連載:徒然なり オンデマンド (8)

印刷が提供できる新しい価値

かくしてデジタルマーケティングは、印刷を求め出している。かつてECサイトはデジタルに始まりデジタルで終わり、紙の印刷など全く無駄だと思われてきたのとは様変わりだ。そしてそれは、あらゆる形態で顧客の手元に届けられるダイレクトメールに他ならない。
前述のDMA &THENでは、驚いた事に若いデジタルマーケターの多くは、印刷が1枚毎に内容を刷り分ける「可変印刷」ができることを知らなかった。彼らは口ぐちに「デジタルと同じような顧客の追跡が印刷でもできる!」という事に驚きを隠さなかった。
印刷業界が造り出したパーソナルなダイレクトメールの通数は、今思えば微々たるものであった。あらゆる人の全てのWebでのアクションが対象となっているリターゲティングの配信数とは、桁がいくつも違う。AIが繰り出している無限とも思えるデジタルメッセージが印刷に化ければ、巨大な通数が生み出される。かつて印刷が単独では開ききれなかった新しい市場が、デジタルマーケティングを取り込むことにより、桁外れの規模で開こうとしている。

蘇る印刷

デジタルマーケターが印刷を求める動きは、アメリカではかねてより観察されていた。オンライン専業の通販各社がカタログを印刷して配布する、という事を行っている。

2014年4月のWall Street Journalの記事で、オンライン専用の通販が、「なぜ紙のカタログを印刷するのか?」という特集をおこなった。答えは明瞭であった。

言って見ればこういうこことであろうか?
「カタログを見て閃いたお客さんは、見ていないお客よりも数倍の購買をしてくれる」
だから、我々は費用を掛けてカタログを制作、配布するのだ。これはデジタルマーケティングの効果測定から分かった事である、と。

(続く)

著者プロフィール
社団法人PODi 代表理事 亀井雅彦(かめいまさひこ)
デジタル印刷活用をテーマに、印刷機メーカーや印刷会社に対して、人材の育成および教育・コンサルティングサービスや各種普及啓発活動、イベント、セミナーの開催を実施。

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