人は、閃く
それはその時点では思い浮かんでいない『掘り出し物』を見つけようとしているからだ。思えば「買い物」とは「買う物」が決まっている場合といない場合がある。「掘り出し物」という「閃き」を掴むために、人々は店を、ショーウィンドウを彷徨う。気付いていない「閃き」を求める需要に対しては、デジタルは実店舗に遠く及ばない。AIは決して閃かない。
さらにデジタルがリターゲティングであまりにも容易に人を追跡する事が、人々に苦痛をもたらし、その効果が明らかに減少している。送りだされるデジタルメッセージへの信頼度は下がり、人々は開かない、見ない、読まない、という状況に追い込まれている。追跡はできても購買、あるいはなんらかのコンバージョンにつながらなければ意味が無い。
世代が変わる、古きを捨てるか? 訪ねるか?
世代がどんどん変わって、生まれてから既にデジタルが存在していたデジタルネイティブ世代が購買の主力になれば、世の中は変わるのか? 要は年寄りがいなくなれば全部デジタルで済むのか? というと、そうでもなさそうである。各世代に名前をつけて、ミレニアル世代とかジェネレーションYとか呼称していた。Wikipediaによれば
“幼少期からデジタル化された生活に慣れ親しみ(デジタルネイティブ)、ほとんどの人が日常的にインターネットを使いこなしているため、それまでの世代とは価値観やライフスタイルなどに隔たりがあるとされる。”
世代とされてきた。彼らは確かにアナログになじみが薄い。しかしその後継であるジェネレーションZはどうも異なっているようだ。彼らは、印刷が、紙が好きだ、とある (https://podi.or.jp/global_contents/whattheythink/wtt20190410/)。
行き過ぎたデジタルからの揺り戻し
そうして再び印刷に脚光が当てられ始めている。紙の持つ信頼感と、見てもらえる、見やすい、閲覧性の高さ、紙の質感、持続性といった特徴がデジタルとの比較で大いに見直されているのだ。そのせいか、ここに来てダイレクトメールのレスポンスレードが大幅に向上している。
世界最大のマーケティング団体DMAがその名をダイレクトメール協会からダイレクトマーケティング協会へ、そして100年目の一昨年にデータ&マーケティング協会と変えた翌年の年次大会の大きなテーマが、Print Innovation Digital Integration(印刷の進化とデジタルとの融合)であったのは何かの巡り合わせであろうか。
ちなみに昨年DMAは、ANA=Association of National Advertiser=全国広告主協会に買収されその一部門となった。部門名がData, Marketing and Analytics division となり、依然としてDMAである。機能は同じようである。マーケターへのDMAの公的な資格であるファンダメンタルマーケターは、今後はアメリカでは広告主協会の公的な資格としてより強力に推進される。日本ではフュージョン株式会社(札幌市中央区、代表取締役社長佐々木卓也氏)がDMA公認ファンダメンタルマーケター資格として日本でEラーニングを展開している。https://dcfm.fusion.co.jp/ を参照されたい。2019年10月より城西国際大学大学院にて、この資格取得を目指した講義を開講する。講師は、驚くなかれ、私が勤める予定である。笑ってはいけない。
(続く)
著者プロフィール
社団法人PODi 代表理事 亀井雅彦(かめいまさひこ) デジタル印刷活用をテーマに、印刷機メーカーや印刷会社に対して、人材の育成および教育・コンサルティングサービスや各種普及啓発活動、イベント、セミナーの開催を実施。 |