第1回で、2017年に始まった災厄の事始めは、アイフォンによって生活者がWebに常時つながってしまった事であったと申し上げた。この年に始まった災厄は、これでは終わらない。これだけでは許してくれなかったのである。この年から皆さんは、Web世界の「発信者」になることができるようになった。そう、呟けるようになった。Twitterなるものが登場している。
さらに御尊顔を世界に向けて晒す事もできるようになった。FaceBookの登場である。
この二つでWebを通じて、今までは到底繋がることができなかった人と友達になったり、会話をしたり、誰宛ということはなく「Web世界」に向けて一人で呟いたりするようになったのである。勿論、会社とも繋がれるようになった。
これはめでたい事である。何がめでたいと言って、これらは全て無料である。無料で、あるいは無料であるからこそ、今までは物理的な行動が必須であった「繋がる」という行為が、その制約を受けることなくデジタルの世界で可能になった。皆さんは大いに呟き、話し、繋がり、このサービスは爆発的に拡散したのである。めでたい。しかし全てメデタシ、メデタシ、とは行かない。
この二社は大企業である。あるいはこの年を境に大企業への道を歩んでいる。タダなのに? カラクリは皆様がご存知の通りである。「広告収入」で成立している。Webページを看板代わりに広告バナーを上げる、というのは昭和であった。そんな甘いものではおへん。この連中は、皆様の呟き、会話、繋がり、ありとあらゆるサイト上の一挙手一投足を全て監視し、データとして売り物にしている。最近耳にしなくなった「ビックデータ」とは正にこの為の言葉であった。皆さんは徹底的に追跡され、データ化され、なんらかのアクションの対象となったのだ。それも24時間。
企業からすれば「お客様の声を聞く」という命題を実現する、かつてない場となったのだ。皆様のWebでのあらゆる行為は集約され、まとめられ、企業がなんらかのアクションをとれる指針の元として売買されるものとなったのである。昭和では営業は足が命であった。商品企画のための情報も、同様に足で集めるしか方法がなかった。勿論今も足は重要であるが、もはやWebを無視することは出来ないのである。「ビッグデータ」の処理はこのために存在する。
では「ビッグデータ」は常に必要なデータを提供しているかというと、そんなことはない。データがビッグになるのは容易であるが、役立つ情報に丸まるのとは話が別である。ただしビッグなデータが存在し、それにアクセスできるのは確かである。
(続く)
著者プロフィール
社団法人PODi 代表理事 亀井雅彦(かめいまさひこ) デジタル印刷活用をテーマに、印刷機メーカーや印刷会社に対して、人材の育成および教育・コンサルティングサービスや各種普及啓発活動、イベント、セミナーの開催を実施。 |