PODi主催セミナーイベント「ラベル印刷のデジタル新時代を探る:Labelexpo AfterTalk」開催レポート

去る11月25日(火)一般社団法人PODi主催のセミナーイベント「ラベル印刷のデジタル新時代を探る:Labelexpo AfterTalk」を、東京有明カンファレンス・センターで開催した。

印刷分野におけるデジタル化の流れは、近年あらためて注目を集めている。各種展示会ではデジタル印刷が主力となって久しいが、特に最近は、メーカーが技術や企画の延長で将来像を語るのではなく、より現実のビジネスに寄り添い、顧客視点で最適化を図る方向へと明確にシフトしていると言えるだろう。

こうした業界動向を背景に、本イベントは「AfterTalk」と銘打たれているものの、単なる展示会の報告会ではなく、印刷会社/ラベルコンバーター、ブランドオーナー、デジタル関連メーカーによる新たなビジネス共創を支援することを目的として開催された。
構成としては、 全体サマリーと各立場からの取り組みや情報を共有するセミナー、各メーカーのデスクトップ展示、そしてネットワーキングパーティの三部構成で実施されており、会場では、これらのプログラムを通じて、メーカーと印刷会社、ブランドオーナーがそれぞれの立場や視点から課題認識やビジネスの取り組みについて情報交換を行い、活発な議論が交わされた。

Labelexpo Europe 2025:サマリー

まず、ラベル新聞社の鈴木由紀子氏よりLabelexpo Europe 2025のサマリーとして、現地映像や画像を交えたプレゼンテーションが行われた。紹介された主なポイントは以下の通りである。

  • インクジェット方式・トナー方式デジタル機の多数出展と、仕様・性能の大幅な進化
  • フレキソユニット、加飾ユニット、加工ユニットとのハイブリッド構成のさらなる進展
  • 中国系メーカーの存在感の拡大
  • 欧州市場における環境・サステナビリティ対応の強化
  • 「ラベルはブランド価値を構成する重要パーツ」という市場認識の広がり

また、Labelexpo Europe は次回より LOUPE(Labels & OUter Packaging Embellishment) に名称を変更し、「ラベルとパッケージ装飾」を軸に、軟包装やシュリンクなどへ領域を拡大していく方針が示された。

セミナープログラム:メーカーとユーザーが語る最新動向

クルツ・ジャパン:暗号化QRコードによる真贋判定サービス

クルツ・ジャパンの田中時江氏は、「複製不可能な暗号化QRコードによる真贋判定サービス」について講演した。 Labelexpo Europe 2025 でも同社は、高度な暗号化技術とデザイン力を組み合わせ、ラベルに“セキュリティ”と“トレーサビリティ”という付加価値を与える展示を行っていた。
講演では、

  • 暗号化技術の優位性
  • ブランドメーカーへの導入事例
  • 日本市場での展開可能性

が紹介され、ブランド保護の新たなアプローチとして注目を集めた。

あさひ高速印刷:バリアブルQRコードが拓く新領域

あさひ高速印刷の岡達也氏は、「バリアブルQRコードの展開」をテーマに、一般商業印刷を主軸としながらQRコード印刷に取り組む背景を紹介した。
講演では、

  • 商業印刷とQRコードビジネスの違い
  • 新たな需要の捉え方
  • 経営者視点でのリアルな課題と可能性

がユーモアを交えて語られ、会場の共感を呼んだ。

ジュポンインターナショナル:化粧品OEMが見据えるデジタル印刷の価値

ジュポンインターナショナルの椿元気氏は、「化粧品OEMが見据えるデジタル印刷の価値転換」をテーマに、多品種・小ロット供給におけるデジタルラベル印刷の有効性を紹介した。
講演では、

  • 高付加価値商品の市場特性
  • カスタマイズ需要への対応
  • デジタル印刷がもたらす柔軟性

といった視点が示され、OEMメーカーならではの実感が伝えられた。

SCREEN GP ジャパン:デジタルワークフローが生むビジネス拡大

SCREEN GP ジャパンは、「SCREENデジタル印刷ワークフローによるビジネス拡大の可能性」と題し、製版技術を基盤とした Digital Contents Factory と EQUIOS の連携によるワークフローを紹介した。
また、Labelexpo でも注目を集めた Truepress Label 350UV SAI S の導入事例を交え、デジタルラベル印刷の新たな可能性を示した。

コニカミノルタ:次世代ラベルビジネスの展望

コニカミノルタは、「Konica Minoltaが切り拓く次世代ラベルビジネス」と題し、世界で1900台以上を販売した乾式トナー機 AccurioLabel 230 / 400 の特長を紹介した。
さらに、MGI社のデジタル加飾機 JetVarnish 3D Web 400 を取り上げ、スポットニスや箔押しなどの加飾工程の自動化・高生産性について説明した。

日本テクノロジーソリューション:小ロットシュリンクの新展開

日本テクノロジーソリューションの明珍早夜氏は、「デジタル印刷が拓くシュリンク包装の新展開」をテーマに、熱旋風式シュリンク装置 TORNADO を紹介した。
従来は難しかった小ロットシュリンクラベルの実用化を実現し、“地球の歩き方”とコラボした地域特化型日本酒の事例など、ユニークな活用例が示された。

エスコグラフィックス:AIが変える色管理の新アプローチ

エスコグラフィックスは、「AIで現物色見本をクローンするカラーマッチング新発想」と題し、AIを活用した新しい色管理手法 Print Clone を紹介した。
デジタル印刷の普及に伴い高まる色再現性・一貫性の要求に対し、従来の課題を解決するアプローチとして注目を集めた。

エプソン:新型 SurePress L-5034 の技術進化

エプソン販売は、「L-5034とエプソンの技術について」と題し、Labelexpo でワールドワイド発表された SurePress L-5034 を紹介した。
講演では、高精細・高画質の実現や生産性の向上、品質安定性の強化に加え、新インクによる基材適性の向上など、同社技術の進化が具体的に示された。

シール堂印刷:フェアトレードバナナペーパーの挑戦

シール堂印刷の新保段一郎氏は、「一枚の紙で世界を救う、国内初のフェアトレードバナナペーパー」をテーマに、バナナペーパーを活用した自社商品の開発事例を紹介した。
理念とビジネスの両立に挑む姿勢が、Labelexpo のテーマとも響き合う内容となった。

ネットワーキングパーティ:多様な参加者が交わる交流の場

セミナー終了後のネットワーキングパーティーでは、Sakae Plus の舛重聖長氏の乾杯を皮切りに、メーカー、印刷会社、ブランドオーナーなど多様な参加者が立場を越えて交流を深めた。

ネットワーキングパーティー内の特別企画として、 ミリアドの関口祐一氏による 「印刷物とITツールで売り上げを伸ばす付加価値提案とは?」 が実施された。 同社のITツール「キュリア」を活用した増販・増客のアプローチや、ラベルを顧客導線のキーとして活用するマーケティング手法が紹介され、参加者の関心を集めた。

イベント総括:リアルな対話が生む価値

イベント全体を通じて、参加者からは新たな接点やコネクションが生まれたこと、異業種との交流が刺激になったこと、そしてこれまで知らなかった情報や視点を得られたことなど、前向きな声が多く寄せられた。

こうした反応は、リアルな場での対話が持つ価値を改めて示すものだ。

デジタル化が進み、リアルな交流の機会が減少したと言われる昨今においても、共通のテーマを持つ多様な立場の参加者が直接意見を交わす場は、ビジネス構築における重要な基盤である。

PODiとしても、先進技術の動向や世界の市場変化、異業種の知見に触れられる機会を継続的に提供し、業界全体の底上げにつながる活動を今後も進めていきたいと考えている。

ラベル・シール印刷の領域でもデジタル化の波は確実に大きくなりつつあり、今回のイベントは、技術・ビジネス・マーケティング・サステナビリティといった多角的な視点が交差する、業界の未来を考える上で貴重な機会となった。

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