これまでのマーケターの仕事は比較的わかりやすいものであった。見込み客をただ営業の漏斗に流し込めば済んだからだ。新聞に広告を出し、テレビにコマーシャルを打ち、来店を促すDMを発送し、購買につなげていけばよかった悠長な時代はもはや過去のものである。
要約
- 購買につながる道筋はもはや直線ではない。企業は、お客様がいるその場所で、つながろうとする努力をしなくてはならないのだ。
- 特に良質のデータを確保することが重要。ジャーニー全体の中で、顧客を次のステップへどのように進めていくべきか、企業の経営陣が意思決定するために役立つからだ。
- 企業は、全てのデータを統合させることにより、顧客の購買動向がわかるようになり、同類の属性をもつ顧客の行動を予測するための基準を確立することができる。
- 顧客データと顧客購買経路を把握することができれば、適切なコンテンツを適切なタッチポイントにて適切な順番で提示するクロスチャネルキャンペーンを設計することができる。
はじめに
これまでのマーケターの仕事はわかりやすかった。見込み客をただ営業の漏斗に流し込めば済んだからだ。その道筋はまっすぐ。新聞に広告を出し、テレビにコマーシャルを打ち、来店を促すDMを発送し、購買につなげていけばよかったのである。しかし、そのような時代はもはや過去のもの。カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)はすっかり変ってしまった。今日の購買につながる道筋は直線ではなく、迷路である。企業は、顧客がいるその場所で、つながろうとする努力をしなくてはならない。
カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)は変わってしまった!
B2BやB2Cの購買者は、豊富な情報を持ち合わせているので、購入する前に入念な調査を行う。モバイルデバイスを使って、ウェブサイトを閲覧したり、ソーシャルネットワークでアドバイスを貰ったり、友達や同僚に彼らの体験を聞いたり、第三者が投稿したレビューを読んだ上で、購入するか否かの判断をするのだ。
これまで、マーケターは、適切なパーソナルメッセージを伝えるためには、ターゲットとなる顧客が何を買ったかを把握する必要があった。今は、それだけではなく、どのように買っているのか、購入にいたるまでの取引がどのようなものかなども把握しなくてはならない。これを一言で言うと、今日のマーケターは、カスタマージャーニーを理解せねばならないという事である。カスタマージャーニーとは、電話、デジタル、店舗、直接の面談、放送メディアなど様々なチャネルにおいて、個々の顧客と企業の間で行われた全ての取引とその経緯のことを指す。各ステップの順序、主旨、重要度などを把握することで、マーケターは売上げにつながるトリガー、動機、障害などがわかるようになるのだ。特定の製品やサービスをより効果的に販促することに加え、にどのようなオファー(特典)に付加価値があるのかを判断することに役立つ。
企業はカスタマージャーニーをどう捉えるべきか
InfoTrendsは「カスタマーエンゲージメント技術:市場の現状」を最近出版した。企業300社の経営幹部にカスタマージャーニーについてどう捉えているかをアンケート調査したものである。カスタマージャーニーでよい実績をつくるには、全てのタッチポイントで最適なデータを活用することが鍵であることだと彼らは言う。全てのタッチポイントで、データを活用することは、企業にとっても顧客にとってもメリットをもたらすからだ。データ分析でなにが一番重要かと聞いたところ、良質なカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)データを収集するとの回答が一番多かった。理由は、企業が顧客をジャーニー全体の次のステップに誘導できるからだという。
データ分析の取り組み
マーケターがカスタマーとの全ての接点(タッチポイント)からデータを収集するひとつの理由は、カスタマージャーニーを図に表す(マッピング)ためである。カスタマージャーニー図(マップ)は、カスタマーのライフサイクルの様々のステージを地図化するフレームワークだ。それを作ることにより、マーケターは、顧客とどのような取引をしているか包括的に把握することができ、カスタマーエクスペリエンスを改善するため、どの部分に注力すべきか判断することができる。マーケターは以下を念頭に、カスタマージャーニーのデータを収集すべきだろう。
- 使用しているデバイス
- エンゲージメントチャネル(例:ウェブサイト、メール、SNS、SMS、ティスプレイ広告、新聞広告など)
- タッチポイントの順序
- どのようなコンテンツが消費されどのような行動が取られているか
- 各エンゲージメントのタイミング
- 次回の行動までどの位の期間があるか
InfoTrendsが調査した企業の80%以上が、部署間であろうと部署単体であろうと、なんらかの形でカスタマージャーニーマッピングを行っているという。全てのデータを統合することにより、企業は顧客の購買パターンを把握することができ、同セグメント内の他の顧客がどのような行動をするか予測する基準を作ることができるのだ。
カスタマージャーニーマップの作成
企業がカスタマージャーニーを的確に地図化すれば、それを使ってコミュニケーション戦略を改善することができる。そこから得られた知見を各タッチポイントとキャンペーン企画のための予算配分、チェネル最適化、コンテンツ開発のために役立てることができるからだ。顧客データと顧客購買経緯を把握することにより、適切なコンテンツを適切なタッチポイントで、適切な順番で提示するクロスチャネルキャンペーンの設計が
容易となる。InfoTrendsが調査した企業の83%が、カスタマージャーニーの各タッチポイントで、カスタマコミュニケーションの整合性をもたす努力をしているという。また、82%が、カスタマージャーニーの知見をリアルタイムに可視化できるよう、ダッシュボードを設けている。更に80%が、ひとつのタッチポイント採集したデータを、ほぼリアルタイムに他のタッチポイントで展開することができると言っているのだ。
カスタマージャーニー管理の自己診断
印刷会社にとって何を意味するのか
顧客企業の多くは、事業改革の最中にあるといえよう。そしてそれは決して容易ではない。顧客に適切な時間に、適切な順序で、適切なチャネルを通じて、関連性(レレバント)の高い情報を伝えることを強いられている。以前と比較できないほど、クライアント企業のさらに先の顧客について把握しなくてはならなくなってきている。クライアント企業のパーソナル化された情報を伝えることでお手伝いするだけではなく、彼らの顧客とのエンゲージメントとコミュニケーションの負荷をいかに軽減してあげることが重要になってくることだろう。そのようなプロセスの中で、印刷会社としてどのような役割を担っていくことができるのであろうか。今後、数週間このコラムにおいて、印刷会社がどのような戦略をとっているか事例を紹介していく。パーソナライゼーションとマルチチャネル・エンゲージメントをカスタマージャーニー全体の中でどのように整合性を持たせるか学ぶことができるだろう。
By | Barb Pellow |
Published | 2016年8月18日 |
原文 | http://whattheythink.com/articles/81861-understanding-customer-journey/ |
翻訳協力 | Mitchell Shinozaki |