2.デジタル後加工(加飾)と軟包装
デジタル分野の潮流としては、先述の他に新たな業容拡大の方向性が挙げられます。1つはデジタル加飾で、インクジェットでニス加工、糊として利用し箔加工、あるいはフレキソをユニット加工機として使用し、これをワンパスで行う、所謂‘デジタル加飾加工機’が多く出展されました。シール・ラベルでは加飾の用途は多く見込まれますが、従来方式では工数がかかり小ロットに対応しにくいという課題を解決し、付加価値アップが見込めるので、今後の成長領域と期待されているのでしょう、多くのメーカーの参入がみられました。ACTEGAのECOLEAG(金粉タイプ)やMGIのニス、箔加工ワンパスなど、さらなる進化も見られました。
すでにLabelexpo Europeレポート①で登場していますが、単独の加飾加工機としては:
MGI
Jet Varnish 3D Compact
オフセット、フレキソ、デジタルでの印刷物への加飾加工専用機。機械をコンパクト化し接着ニスと非接着ニスを使い分け、箔加工とニス加工をワンパスで実現。併せて粘着ラベル用デジタルカッターOctopus webも展示。
ABG
Actegaを組み込んだソリューション展示。箔の効果を利かせたSAKEラベル。Digital Finishingを謳い文句にDigiconシリーズを並べている。インクジェット箔も展示。
またデジタル後加工機として:
Cartes
剥離紙を分離させて印刷紙を持ち上げ下からレーザーを打ち上げ抜いた後、再接着して元に戻すレーザー抜き機。それに、IJヘッドからの糊ニス印字から箔転写するユニットを展示していました。
2つ目は軟包装システムの拡大です。ScreenのTruePress520Pや富士フィルムのFP790などインクジェットベースのものも、ザイコンのTX500などトナーベースのものもあります。さらには環境対応の観点から、‘紙の軟包装’への動きも見られました。どこまで需要が増えるかはまだわかりませんが、軟包装パッケージがラベル業界の業容拡大の大きな可能性領域としてとらえられていることがわかります。(富士フィルム、ザイコンはLabelexpo Europeレポート①を参照)
SCREEN
TruePress 520P
Lombardi
軟包装用フレキソ機。デジタルとのハイブリッド
3.ユニット化の進行とメーカー協調、多国籍化
上記1.と通じるものがありますが、フレキソとインクジェットのユニットを前後で組合せ製品の特徴出しを図る構成が多数見られました。従来のメーカー一社単位での単独製品展示ではなく、特にデジタルメーカー+フレキソメーカー+加工機メーカーが共同でワンパスラインを組むという姿が今後の主流になるだろうと想定します。 過去般商業印刷でオフセットとデジタルのメーカーのグルーピングが見られましたが、同様のことがラベル市場でも起きつつあるのを実感します。
メーカー協業事例
- Durst~OMET
- コニカミノルタ~MarkAndy
- SCREEN~NielPeter
- ザイコン~KRUZ
また、中国やインドなどのBRICSからの新規参入が目立ちました。中国の景気減速が言われ散る昨今ですが、それでも先進諸国と比較すれば今後の成長期待は大きく、特にラベル・シールは人口比で市場が期待でき、一般商業印刷のようにデジタルメディアにあっさり取って代わられることが無いので、今後のグローバルな観点からの成長領域になるのかもしれません。中国は反親欧の傾向が強いですが、欧州市場を\\新たな拡大領域と見ていると思われます。さらに、特にUVインクジェットの価格下落もこの動向の一要因かとも思われます。
第三地域メーカーの製品
- Han(中国)
- Monotech(インド)
- Label Source(中国)
- Orthotec(台湾)
- Darui(中国)
- JETRON(トルコ)
4.環境適合、サステナビリティ対応
最近ではあたりまえというより必須のPR要件となってきていますが、多くは「アナログ→デジタルによる工程改善」「使用電力量の削減」「環境対応材料の使用」というのがポイントとかと思われます。(飛躍的な技術革新と言うものはありませんでした)その意味で水系インクジェットと比較して無乾燥の利点があるmemjetを採用した製品が多く向けられましたが、これもそのひとつかもしれません。
Memjet応用の製品
- Astronova
- ARROWS
- Affinia Label
材料面では、リンテック(モノマテリアル素材)、ザイコン(エコ・トナー)、Durst(VOC削減インク)など、様々な対応が見られました。
まとめ
メーカーの製品展示が主流となるので、生産現場の効率化を目的とした機能・性能の向上達成が前面に出るのは当然ですが、それを単体のマシンでなく、トータルのプロセスで改善しようという方向性は明確になってきたと思います。一方で、さらなる需要喚起を目指しデジタル技術とマーケティングの融による需要喚起、それらのリアルな生産システムへの反映が、今後展示会として期待されるのではないかと考えます。
【著者紹介】
荒井 純一
1959年東京生まれ。コニカミノルタ株式会社にて長くデジタル印刷事業を担当。立上げより20年余、商品企画から国内外の市場展開まで広く活動を行い基幹事業への成長に導く。2023年より一般社団法人PODi顧問。