Xerox Inkjet drupa 2016 (WhatTheyThink?)

XeroxとImpikaの統合によって、drupa 2016で新しい製品を紹介が可能となった。さらにはXeroxの将来の方向性を見せているかもしれない。

Xeroxが二つの上場会社に分割することになったのはご存知であろうか?一つ目はサービス会社である。もう一つは元々Xeroxのビジネスである印刷機、コピー機器、とそのプロセスの会社である。それを吉報と考え、新会社には様々な機会があるという立場から見た方がよいではないか。

私の最初のXeroxに関する文章では、同社の歴史で初めてのインクジェットであるCiPressのことを調査した。次いで、幅広いインクジェットの技術と経験を持つImpika社の製品について、紹介の文章を書いた。その後、XeroxはImpika社を買収し、幅広いインクジェット技術を持つ会社を形成した。2015年、スイスのルツェルンで行われたHunkeler Innovation Daysで、最初のXeroxブランドの製品を紹介した。Xerox RialoTM900という新製品は称賛を持って迎えられた。ユニークな「ビジネス品質カラー」のロールトゥシートのインクジェット印刷機であり、A4版でフットプリントも小さい。もっとも最初に1億円以下(6-7千万円)値段で提供されたインクジェット機器でもあった。この商品によって、Xeroxブランドが再び認知され、インクジェット市場においての立場を定義させることになったのではないだろうか。 drupa2016では、更にXeroxのインクジェット市場のビジョンを発表する予定であろう。


イメージング

現在のXeroxは新製品の開発にあたって、広範囲なインクジェット技術を利用することができる。それにはTektronix社から得た「フェーズを変える」技術があり、Impika社から得たサードパーティーのインクジェットヘッドを柔軟に利用する技術があり、Xerox PARCの研究と製品開発であり、パートナー会社である富士フィルムのDimatix技術にアクセスする可能性もある。

現状のインクジェット商品ラインの中で、Xeroxはこれらの中からいくつかのものを利用している。CiPress機は、コストの安いオフセット用紙にプライムコート無しで印刷が可能な、水無しのドロップオンデマンド(DoD)で600dpiのプリントヘッドを利用している。Rialto 900と新製品であるBrenva HDは、ネイティブで600dpiの解像度に4段階のグレーレベルが処理できるピエゾ方式のDODヘッドであるKyocera KJ4Bプリントヘッドを利用している。Evolution、CompactとReferenceの各既存機種及び新製品であるTrivor 2400は、パナソニックのDoDシリーズ420プリントヘッドを利用し、様々な液滴を粒径を打ち分けてネイティブ600dpiの解像度を実現している

しかし、ここまでのこのシリーズの読者であれば、プリントヘッドの選択だけではなく、利用する方法によって印刷機の性能と品質が左右されるのはご理解いただけるであろう。例えば、Kyocera KJ4Bを使用している他の印刷機メーカーも、Xeroxと同じくプリントヘッドの性能を向上させている。キヤノンのColorStream 3000の「プリファイア」機能、VarioPrint i300の「マルチドロップ」機能といった例である。XeroxのBreva HDにはジョブによって、液滴の粒径、スピード、解像力を調整する能力を実現している。XeroxのCompact、Reference、Evolution、ならびにTrivor 2400にはImpika社が開発したVHQモードを利用している。VHQモードは、パナソニックのプリントヘッドが通常は1ノズル当たり3段階のグレースケールのモードの代わりに、2つのチャネルで2種類の液滴サイズを射出する。その結果、あらゆるサイズの液滴の着弾時間を最小にし、着弾位置性能を高め、画像の品質を向上するというメリットがある。 VHQモードには2つのプリントヘッドのチャネルが必要なので、Evolutionではフルカラーのみ、Trivor、Compact、Referenceではモノクロのみで稼働できる。今後はフルカラー、他の製品にもフルカラーモードのオプション機能となっていくであろう。最後に、Xeroxは今年30 kHzから40 kHzにプリントへッドの周波数を高め、印刷機の生産性を30%も高めることができた。


インク

ここ何年もXeroxとImpikaは、トナーとインクの性能の改善に取り組んでいる。2012年、ImpikaがHD顔料を使用したインクを発表した。HD顔料インクとはナノ粒径の顔料粒子によって、ノズルの通過制を確保しながら顔料の充填性を改善するものである。今年drupa 2016において、さらなる性能改善、より広いガマットとコントラストを実現する新しいHDインクを発表する予定である

drupa 2016ではXeroxの新製品であるハイフュージョンインクの技術デモンストレーションを行う。これは標準的なマット、シルク、グロスのオフセット用紙に、後処理をすることなく印刷する事を行う取り組みである。もちろんインクはもとより、インク、ヘッド、ドライヤー、チラーを全部総動員する必要がある。これは全印刷機メーカーの目標であり、どのように達成されるのかを大いに期待している事だ。drupa 2016にデモンストレーションを行われるハイフュージョンインクのサンプルを見る機会があったのだが、素晴らしい品質であった。 Xeroxのハイフュージョンインクは2016年のQ4にベータテストが始まる予定であり、2017年の発売予定となる。


印刷機モデル

プロダクション電子写真(EP)印刷機において、Xeroxは最も複雑なポートフォリオを持っている。11台のモノクロームとハイライトカラーのモデルに加えて、10台のフルカラー印刷モデルを有している。数多いEPカラー機のラインの中でも、ハイエンド機は、2015年に開発されたiGen 5がフラグシップである。ミドルクラスではXerox Versant 2100があり、ローエンドはXerox C60機である。

しかし、インクジェット印刷機も含まれれば、新しい商品カテゴリーと定義が必要となる。 Xeroxのインクジェットのポートフォリオには8台のモデルがある。現在発売している連続紙のラインには、水無しフェーズチェンジCiPress印刷機の325 fpmと500 fpmモデルがある。Impika社の買収から3台の水性インクDoD印刷機も統合されている。最速で833 fpm (254 mpm)のXerox Impika Evolution、416 fpm (127 mpm)のXerox Impika CompactとReferenceである。さらに157 fpm (48mpm)で連続紙巻き取り、A4シート切り出しのXerox Rialto 900がある。 それに加えて、連続紙のTrivor 2400とカットシートのBrenva HDがある。


次時代のモデル

drupa2016にむけて、2機種のインクジェット印刷機を発表する。2012年に紹介されたRailto 900は、単にXeroxの外枠で包んだImpika のGensisコンセプトの印刷機であったけれども、今回の2機種は新生の会社から生まれたものだ。Xeroxが「新しい」インクジェットのポートフォリオを築くにあたって、この2機種は、もともとの二社の既存顧客からのフィードバックと強みを織り込んで、市場のスイートスポットをターゲットとしたものとなった。


Xerox TrivorTM 2400

この新製品はImpika Compactを基礎とするが、抜本的に堅牢性が高い機器である。まず、コンパクトなデザインを引き継いでおり、寸法が11.5フィート(3.5メートル)縦、8.8フィート(2.7メートル)横で、市場の中で最も小さなフットプリントのインクジェット機である。これを、ターンバーを使わず、紙パスを最適化することで実現した。

特にヨーロッパとアジアの多くの印刷会社にとって、インクジェット導入を考える際にフットプリントというのは大きな問題となる。ほとんどの会社が小型の電子写真のトナー機の置き換えを考えており、床面積は常に課題となり、Xerox Trivor 2400のコンパクトさは重要である。

この印刷機は4/4、4/0、1/1の設定で、フィールドアップグレードも可能である。印刷スピードを調整する機能があり、オペレーターが印刷機をスローダウンして印刷をチェックすることが、最速で生産性を確保することの切り替えができる。前述した通り、この印刷機はネイティブ600 dpi解像度のパナソニックのインクジェットヘッドを利用しており、複数の品質モードをサポートしている。生産性モードでは360×600 dpiの解像度で印刷スピードが551 fpm (168 mpm)、品質モードでは600×600 dpiの解像度で328 fpm (100mpm)、1200×600 dpiの解像度では164 fpm (50mpm)になる。モノクロのモードでは、656 fpm (200 mpm)、656 fpm (200 mpm)、328 fpm (100mpm)になり、前述したVHQも可能だ。

DoDインクジェットヘッドは印刷してない間も、なんらかの動作をして最適の状況を保たないと、ノズルが欠落するおそれがある。その為にClear Pixel技術を搭載している。Clear Pixel技術とは一定期間で裸眼では見えない間隔でヘッドからスプレー状にインクを射出する技術である。 さらにはXeroxインテリジェント・スキャンバー技術も搭載している。これはオンデマンドで欠落した液滴の検出/リカバリーを行い、インラインで密度の最適化を行う機能である。ほとんどのピエゾDoDプリントヘッドは非常に長寿命であり、年単位で計測されるが、さらに印刷コストを削減するためプリントヘッドのリファーブのプログラムを準備している。

Trivorはメディアの事前コート用のプライミングステーションを装備していないが、HDインクによって通常のオフセット用紙に対応している。 Xeroxは、この新しいインクは市場で最も長時間空気に触れていられるインクであり、パージの必要は最少で、ノズルを詰まらせないとしている。しかし非インクジェット塗布紙、とくにコート紙系の対応には限界があるとしている。しかし、Xeroxこの問題は、新しいハイフュージョンインクを利用すれば改善するであろう。

信頼性と生産性のために、Trivor機の搬送系には改良したウェブのクリーニング機能と新しい紙パス構造を採用した。乾燥はIRと熱風乾燥を併用している。数多くの後加工機パートナーのフィニッシング機器と稼働できるように開発されている。 その結果として、使用できる紙の斤量が40-230 gsmまで拡張されている。

TrivorのフロントエンドはFieryが提供しているXerox IJプリントサーバーである。あらゆる印刷の需要に対応して、印刷機がフルスピードで稼働できるように、スケーラブルなプリントサーバーである。Xeroxは各需要に応えるべく6種類の機種構成を準備している。


Xerox BrenvaTM HD

Brenvaは両面印刷機で、B3+サイズ(14.33 x 20.5インチ)まで印刷でき、最も高速でA4サイズ197枚/分である。Rialtoと同じように「ビジネスカラー」品質で「軽いダイレクトメール」等をターゲットとしている。両機とも600dpiの Kyocera KJ4Bプリントヘッド、画像処理、水性インクを共用しているので、あまり驚くことではないのだろう。4つのプリントバーはそれぞれが独立したモーターで制御され、最適の見当と品質のためにプリントヘッドは常に監視、調整されている。画像処理システムは可変の液滴粒径を制御し、複数の異なった粒径の液滴がどこの位置でも着弾できることにより、印刷の品質は改善され、更にスムーズな線が印刷できるようになった。さらにインテリジェント・スキャンバー技術によって、根詰まりによる欠落を特定し、自動で補填を行う。インラインの分光光度計が、新しいメディアのプロファイルを行う間に生成されたターゲットチャートを読み込む。

iGenに詳しくない方も、下の動画をご覧いただければストレートな紙パスをご理解いただけるであろう。

搬送機は高度な見当合わせを、用紙が印字位置に到達する際の横の動きを押さえ、ダイナミックにベルトの位置補正を行うことで実現している。インクジェット用のコーティングされてない表紙がスムース、レギュラー、ラフなメディア、及びインクジェットコート紙に印刷が可能である。 2万枚シートの積載能力があり、8か所から搬送できるので、稼働中でもメディアの搭載が可能である。 Xeroxプロダクションスタッカは、5,500枚搭載可能で、稼働中でも紙変えをすることができる。XeroxにCP Bourgの中綴じ機を装備することができると公表され、近い将来に他の後加工機も装備されることになると見込んでいる。

BrenvaのフロントエンドはWindows環境のFreeFlowプリントサーバーと関連ソフトである。この最新のバージョンではWeb UIが更新され、既存のXerox顧客のDFEにあるインテリジェントな画像アルゴリズムと修正ツールも搭載される。これらを全て込で約7千万円の価格とし、市場の中で最も安いカットシート・インクジェット印刷機となった。


ワークフロー

個々のDFEに加えて、ワークフローオートメーションのシステムの中核であるFreeFlow Coreの開発を継続している。この新技術は徹底的に新製品のために設定されたもので、元のワークフローアプリ「FreeFlow Process Manager」と混同してはならない。

FreeFlow Coreは「ルールベース」(決められた流れ)に基づいてワークフローを自由に設計できるソフトである。 このアプローチをとることにより、Xeroxはワークフローを「すべてのジョブに一つの」ではなく、自由に組み合わせることが可能なアプローチにしている。

drupa 2016において、新しいFreeFlow Core 5.0をリリースする予定である。2015年の最初のクラウドの発表をさらに発展させるものである。 それには出力管理機能とより広いサードパーティーのパートナーの後加工機の制御と統合がなされている。


Xeroxが紙器を?

この記事の取材の途中で、Xeroxの最も大きな秘密の一つを発見したと思った。Xeroxは沈黙を守っていたが、60社ぐらいの観客(ほとんどヨーロッパにある)が紙器の生産ラインでiGenを利用している。この情報だけで新しい記事が書けるけれども、次の動画が良い説明をしている。

そこで終わりではない。XeroxとKBA社は、KBA VeriJET 106ハイブリッド印刷機Powered by Xeroxを共同開発すると発表した。紙器業界の特定のニーズに対応したインクジェット・オフセット印刷機であり、ユニークな組み合わせではないだろうか。このハイブリッドのコンセプトは印象的で、この紙器印刷機を一段と進化させることができたようである。新しい情報が利用可能になり次第、更新する。


結論

電子写真のトナー印刷の中でXeroxは当初からリーダーであったのに対して、インクジェットの世界においては追う立場となった。そしてプロダクションプリントの本来的な経済的ブレークスルーの中核は、インクジェットとその自動化である。 Trivor機とBrenva機のリリースを見れば、Impika社の商品ポートフォリオの外見を改めるだけではないのが見えてきた。さらXeroxのKBA VariJET 106紙器印刷機を加えれば、Xeroxが電子写真の世界で為したように、インクジェットの世界でも新しい基準を設定したいとみえる。それを達成するために、既存の電子写真と小ロットオフセットを、限りなく障害を少なくしてインクジェットに移行させようとしているように見える。その一方、「新しい」Xeroxとして、どうやって市場に伝達するか?は大きな課題である。そろそろ膨張する幅広いポ-トフォリオを見直すべき時かもしれない。この新会社とは何か?新しい市場の条件に対処できているか?という質問に関する具体的なメッセージを伝える必要がある。まずXerox独自のインクジェット印刷機に加えて、Xerox Impika、またはXeroxの他のイメージング技術とのジョイントベンチャーを重ねていくのは良い一歩ではないだろうか。

 

 

  

whattheythinkmini
By David Zwang
Published 2016年5月25日
原文 http://whattheythink.com/articles/80567-inkjet-drupa-2016-continuing-story-xerox/

  

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