drupa2024:あなたは、見逃して大丈夫?

全世界の印刷、パッケージ関係者が会うと、大抵こんな話になる: 「今まで何回drupaに参加しましたか?」「初めてのdrupaは何でしたか?」 それにはそうなる理由がある! David Zwangが、メッセ・デュッセルドルフのプリント・テクノロジーズ、drupa担当ディレクターのSabine Geldermannに、来たるdrupa 2024と、それに向けた様々な地域イベントについて話を聞いた。

背景

全世界の印刷、パッケージ関係者が会うと、大抵こんな話になる: 「今まで何回drupaに参加しましたか?」「初めてのdrupaは何でしたか?」 私は1982年にメッセ・デュッセルドルフで開催されたdrupaに初めて参加した。

このような質問を掘り下げ、ディスカッションに耳を傾けると、印刷業界の進化の原動力が見えてくる。大小さまざまな印刷イベントがあり、地域的なものもあれば特定の業種をターゲットにしたものもある。パンデミックでdrupa2020のキャンセルという不運に見舞われ、drupaに参加したことのない業界関係者にとって、今がチャンスである。そして、drupaに参加したことはあるけれど、drupaが本当に何を提供してくれるのか忘れてしまっている人たちにとっては、キャッチアップが必要なのかもしれない。私はメッセ・デュッセルドルフのdrupa担当ディレクター、Sabine Geldermann氏と話す機会があり、drupaそのものと、それにつながる様々な地域イベントについて話をした。

感動

WhatTheyThink:Sabineさんは drupa 2024を前に世界中を飛び回り、イベントを開催していますね。様々な要因があると思いますが、drupaの魅力の真相に迫りたいと思います。何か発見はありましたか?

Sabine Geldermann:昨年1年間drupaのスタッフや役員とともに世界中を旅し、これまでに約25回のプレゼンテーションを行いました。VDMAや印刷業界の役員たちとともに、アメリカやヨーロッパといった確立された市場だけでなく、新興市場にも足を運びました。どのイベントでも、drupaの興奮と大きな期待を常に感じることができました。直近ではブダペストでそれを目の当たりにしましたが、インド、ベトナム、タイ、その他私たちが訪れた新興市場でもそれを目の当たりにしました。
プレゼンテーションの後や質疑応答で、業界の皆様が「5回目のdrupaです」とか「20年以上drupaに参加していますが、とても楽しみにしています」と仰っていただけるのは、いつも感慨深いものがあります。drupaは常に印刷業界のオリンピックとして認識されてきました。あるいは、私たちのプレゼンテーションの後にインドの人が言ったように、宗教に例えるなら、drupaは印刷の”メッカ”なのです。

トレンド

WTT:一旦感情的な魅力を乗り越えれば、drupaがこの業界にとってほとんど必須の魅力である理由は他にもたくさんあります。そのひとつは、進化し成長し続けるこの業界がどのように、そしてどこへ向かっているのかを理解する必要性でしょうか?

SG:確かに、私たちが生きている破壊的な時代を考えると、競争上の優位性を維持・成長させるためにdrupaに来る必要性はこれまで以上に高まっています。業界がどのように発展し、どのように進化しているかを理解するためにも、drupaに参加する必要があります。多くの出展者は、市場では未知で、議題にも上がっていない初公開の製品を展示することを強調しています。
ですから、まず第一に多くの多様な技術トレンドとイノベーションの展示が期待できます。大規模な設備や技術を物理的に持ち込むことが、いかに持続可能性に繋がるのかという議論があります。しかし、その一方で、誰もがこれがブースや展示会の重要な部分だと思っています。

参加者が展示会に行って、デジタル・スクリーンしか目にしないとしたら、それは的外れです。世界規模の参加者や見込み客は、機器や技術に触れ、学び、体験したいと思うものです。そのため、多くの大企業がすでにdrupaで展示する技術の出荷を手配しています。これは良いことだと思います。

課題

WTT:COVID以降も印刷会社や機器メーカーの中には、意思決定に慎重になっているところもあります。各地を回り、様々な聴衆と話をする中で、どのようなことが見えていますか?

SG:先週、年に一度のdrupa委員会がありました。委員長はKoenig & Bauer社のCEOでもあります。彼は私たちと一緒に旅をして、その興奮にとても感動したそうです。新興市場は非常にハングリーであり、非常にダイナミックであり、ヨーロッパや西洋の一部の確立された国々と比較して、業界の進化と機会を理解することに関心があるように見えるという事実に心を奪われたと語っていました。
誰にでも課題はあります。エネルギー価格や紙の価格、破壊的なサプライチェーン、インフレや金利の話をしましたが、こうした課題を抱えているのはドイツやヨーロッパだけではありません。しかし、一部の国、特に新興市場では、異なる態度、異なる考え方でこの問題に取り組んでいます。確かに私たちは困難な時代を生きています。個々の企業として、国として、あるいはテクノロジー・ドライバーとして、何ができるか、何を助けることができるかを示さなければなりません。それが大きな違いです。

業界の成長

WTT:印刷業界は衰退しているという感覚が蔓延していますが、実際には進化し成長している業界です。

SG:おっしゃる通りです。結局のところ私たちはそれを証明するために、会議やパネルで信頼できる統計を、皆さんと共有しているのです。現在、世界規模で400万人以上の人々が印刷業界で働いており、9,800億USドル以上の売上(収益)を生み出しています。
商業印刷は、アジアでは大きく異なりますが、ヨーロッパやアメリカ大陸の一部のような成熟した市場では、多かれ少なかれ安定しているか縮小しています。心強いのは、世界の中産階級が成長しているという事実です。ある予測によると2015年から2030年の間に、特にインドとアジア太平洋地域では、人口の増加に比例して中間層の規模が倍増します。これは、彼らが消費するものと自動的に連動します。つまり、中産階級が増えれば、そしてその地域の平均年収が2万USドルになれば、自動的に消費も増えるということです。この場合は、食品、非食品、医薬品、化粧品のことを指しています。これはすべてパッケージであり、パッケージ用向けの印刷の事です。
そして、これは印刷・パッケージ業界全体の成長も後押ししています。成長という点ではプラス効果です。平均すると、年平均成長率は4%ですが、インドのように6%の国もあります。ベトナムでも5~6%の成長率です。これは、例えばヨーロッパでは2%の成長率しかない地域と比較した場合です。しかし、人口を考えると、アジア、アフリカ、ラテンアメリカが有力であることは間違いありません。人口が増加しているため、自動的に印刷物やパッケージ商品が必要とされるのです。それが私たちの業界を牽引しているのです。

グローバルな関心

WTT:drupaは地域的な、あるいはドイツ的なイベントだと言う人も多くいます。私は必ずしも賛成しませんが、あなたは何を見ていますか?

SG:もちろん、ヨーロッパからの来場者も多いでしょう。しかし、例えばオーストラリアを拠点とする雑誌・出版社グループであるプリント21が、彼らが言うようにキウイ(ニュージーランド)とオーストラリア人のグループを引き連れて来ているのはとても嬉しいことです。彼らは伝統的に行っているように、ダウンタウンの旧市街でパーティー・イベントを企画しています。すでにベトナム、タイ、インドネシア、シンガポール、フィリピン、韓国などアジアの代表団からも同様の質問や要望が寄せられています。drupaの期間中には、世界印刷・コミュニケーションフォーラムや理事会も開催されます。ラテンアメリカを含むアメリカからも多くの来場者があることを期待しています。世界は準備を始めています。

次世代の育成

WTT:最近よく耳にすることのひとつに、上の世代が仕事を離れていく中で、未来の世代に印刷物を利用してもらう必要性があります。教育界と何か活動をしていますか?

SG:もちろんです。というのも、私たちがワールドツアー中によく耳にした中心的な論点は、ヨーロッパや成熟市場で熟練労働者が不足しているということでした。その一方で、人口の伸び率もそれほど高くないため、若い人口を抱えるインドや新興市場とは異なり、若い人材が入ってきて成長することもあまりありません。それに加えて、印刷業界は若い才能にとってベストではないという評判もあります。ですからロビー活動を行い、私たちの業界がいかに素晴らしいかを紹介し、可能性と機会、そして私たちの業界で確実に必要とされている新しいスキルを示す必要があるのです。
そのため、私たちは大学と協力しています。例えば、シュトゥットガルト大学は、協力するすべての国際的な大学パートナーとともに来場します。デュッセルドルフのファッション・デザイン・グラフィックアート・アカデミーとも連携しています。私たちは、彼らの学士課程のためのプログラムを開発し、ノミネート者と受賞者は、他の大学パートナーと利用している専用フォーラムであるホール7のdrupa DNAで彼らのプロジェクトを展示します。若い才能、卒業生、学生たちに市場におけるあらゆる機会を示し、潜在的かつ将来的な上司や就職先となる可能性のある企業とつながり、出会うことが重要だと考えているため、我々は大学からの参加を大いに奨励しています。一方では、HP社やハイデルベルグ社のような大手企業のための雇用社としてのブランディングであり、もう一方では、若い人たちがビジネス・ネットワークを構築するのに十分な早い時期から始められる、まさにマッチメイキングなのです。
欧州ブランドパッケージングデザイン協会が主催する、先見性のあるインテリジェントでスマートなパッケージング・ソリューションのための専用ルームには、大学からも参加があります。ミラノの美術アカデミーとも協力しています。また、英国やオランダのグループとも協力しています。このような具体的なケースでは、若い才能がHP社やハイデルベルグ社、Koenig & Bauer社など、実績のある企業と協力・連携しています。彼らは、drupaで初めて展示されるユニークなパッケージング・ソリューションやアプリケーションを生み出しているのです。

イベントの規模

WTT:drupaはいつもマラソン大会のようなもので、たくさんの建物があり、たくさん歩きます。今年はどんなことが期待できますか?

SG:私たちは見本市会場全体をカバーし、18のホールについて話しています。番号は17で終わっていますが、8ホールAと8ホールBがあり、7ホール0と7ホールAがあります。ですから、少し分かりにくいですが、それでも18ホールが含まれます。正味面積はおよそ14万平方メートル(150万平方フィート)です。時代と業界の統合を考えれば、これまでのところ非常に良い結果です。興味深いことに、出展者側からの要望はまだあり、トルコ、ドイツ、イスラエル、そしてアメリカからの新規出展者が、まだスペースはあるのかと尋ねてきます。私たちが見ているのは、世界中が以前よりもずっと短いタイムラインで決断を下しているということであり、おそらく他の国が何をしているのかを観察し、競合他社がそこにいるのだから自分たちも行かなければならないと気づいているの でしょう。ですから、drupaまであと3ヶ月しかないにもかかわらず、準備という点では非常に柔軟性があるようです。

仕事ばかりで遊びなし?

WTT:drupaに参加する副次的なメリットの一つは、展示会場を歩き回って疲れたら、メッセの外に出てデュッセルドルフで時間を過ごすチャンスがあることです。今年はどのような特別イベントが期待できますか?

SG:今年もdrupa Cityを開催します。レストラン、ホテル、小売りなど、街のパートナーとともに企画するホスピタリティ・コンセプトです。出展者パーティーもあります。また、記者会見やグローバル・アソシエーション・レセプションなど、出展者、あるいは業界誌やそのコミュニティが主催する、夜のダウンタウンを楽しむためのさまざまなイベントもあります。
また、6月1日には素晴らしいイベントがあります。ジャパン・デーです。ご存知かもしれませんが、デュッセルドルフのニックネームは「リトル・トーキョー」。そのため、毎年ジャパン・デーを開催しています。今年のジャパン・デーはdrupaの会期中に開催されます。日中、川沿いの会場では、伝統的な服装や漫画の服装をした人々が集まり、華やかな雰囲気に包まれることでしょう。日の入りの10時半か11時ごろから始まる花火大会は最も美しいもののひとつで、お正月の花火よりもさらに洗練された壮大なものとして知られています。他にも多くのイベントがあるのですが、どのイベントがどの日に行われるかは、現在準備中なのです。

参加と宿泊

WTT:これまでの登録状況は?

SG:登録はダイナミックに伸びています。そのため、チケットショップがどのように動いているのかを日々観察することができます。ビザが必要な国が多いので、早期登録が多いのはそのためです。それ以外は、残り3カ月で非常にダイナミックになってきていると思います。来場者側のチケット購入に加え、出展者側も顧客を招待しています。他のどの業界の展示会と比べても、次の数週間から数ヶ月の間に盛り上がりを見せるでしょう。多くの人はすでにホテルの部屋や飛行機の手配をしていますが、最後のステップは常にイベント自体のチケットを購入することです。
一般的に、ホテルの部屋数は前回のdrupaから、そして2020年以降も増えており、2016年と比較するとさらに増えています。そのため、求めるホテルの質にもよりますが、1泊でもそれなり金額で宿泊できます。出展者や参加者の中には、ケルンやデュッセルドルフ周辺に宿泊する賢い人もいます。そのため、部屋探しはまだこれからの場合、十分早い時期から始めておくに越したことはありません。Airbnbsも素晴らしい選択肢です。

WTT: drupa 2024は2024年5月28日から6月7日までデュッセルドルフ・メッセで開催されます。参加登録、出展者、プログラム、トラベル情報はdrupaサイトに掲載されている。

 

By David Zwang
Published February 20, 2024
原文 drupa 2024: Can You Really Afford to Miss It?

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