今年の初め、COVID-19の流行で世界は一変しました。企業や学校は一時的に閉鎖され、多くの従業員や学生は、事前の警告などほとんど、あるいは全く無く、突然リモート環境に追いやられました。このように距離をとった状況で成功した従業員や生徒もいますが、多くは苦戦していますし、現在でも苦戦を続けています。不確実性が続く中、新学期を目前に控え、この記事では、リモート勤務とリモート学習の長所と短所を探っていきます。
- 学校年度の終わりには、夏休みに入って感染拡大のペースが遅くなったことと、秋までにパンデミックが収まるのではないかとの期待感から、多少の安堵感がありましたが、今では以前にも増して疑問の声が上がっています。
- 一部の従業員にとっては、休暇や昇給、さらには退職金制度よりも、柔軟な労働条件の方が魅力的です。
- 私生活と仕事を切り離したいと考える人もいますが、職場と自宅の拠点が一体となっている場合、「区分け」は不可能に近いかも知れません。
- 明快な答えはなく、パンデミックの状況は流動的であるため、2020/2021年度の計画は一瞬にして変更される可能性があります。
序章
今年の初め、COVID-19の流行で世界は一瞬にして変わりました。企業や学校は一時的に閉鎖され、多くの従業員や生徒は、事前の警告などほとんど、あるいは全くなしに、突然リモートでの勤務や学習を余儀なくされました。企業は、遠隔地にいる従業員が自宅で仕事ができるようにするために奔走し、教師はバーチャルな教育プロセスを継続するために奮闘し、学生は通信教育に取り組み、働く親は仕事の生産性を維持することと、一日中同じ屋根の下にいる子供たちの、教育と養育の負担を両立させました。
多くの疑問…しかし答えは少ない
学校年度の終わりには、夏休みに入って感染拡大のペースが遅くなったことと、秋までにパンデミックが収まるのではないかとの期待感から多少の安堵感がありましたが、ニュースを見ると、これまで以上に多くの疑問があがっていることをご存じと思います。効果的なワクチンは開発されるのだろうか? 学校や職場に戻っても安全なのか? COVIDの患者が増加している州は、「再び平常に戻る」ことを期待して段階的な再開をすべきなのか? 秋には学校はどのようになるのだろうか? ほとんどの人は、今の日常を営んでいますが、これからの新しい学年は、間違いなく、働く親、教師、企業、そして生徒に新たな課題をもたらすでしょう。誰もが気が狂いそうになるほどです。
経済が再開し始めたとは言え、COVIDの患者が急増したことで、米国の企業が長く営業を続けられるかどうか疑問視する声も出ています。選択の余地なく突然リモート勤務を余儀なくされた従業員の中には、リモート勤務を楽しんでいる人もいますが、多くは適応に苦労しています。企業にとって最良の選択肢は何でしょうか? 確かに在宅勤務を好む社員もいるでしょうが、リモート勤務は士気と生産性に最適なのでしょうか? 昔のオフィスをベースにした朝9時から夕方5時までの平凡な生活が恋しいと思っている従業員はどうでしょうか?
教育現場では、新学期の開始が間近に迫っていることから、さらに複雑になっています。この春に生徒や教師がリモート学習を強制された時、すぐに適応し新しい手法で成功した生徒もいます。しかし残念ながら、すべての人が成功したわけではありませんでした。一部の教師は、バーチャルな形で生徒と会話をするのに苦労し、多くの子供たち、特に幼い子供たちは画面から学習することにうまく対応できませんでした。さらに働く親は二つの世界の板挟みになっています。一方では、仕事の生産性を維持し、雇用主のために質の高い仕事をしなければなりません。もう一方では、子供たちが同じ屋根の下にいて、新しい教育の手法に苦労しているとしたら、これは容易ではありませんでした。
リモート勤務:長所
世界的なパンデミックへの対応という最初のショックから立ち直った後、リモート勤務を非常に楽しんでいる人もいます。数週間の在宅勤務の後、人々は自分の好みに合わせてホームオフィスを設定することができました。さらに、テクノロジーのお陰で、離れた場所にいてもコラボレーションしたり、他の人とつながったりすることが可能になり、通勤や準備に時間が掛からないという利点もありました。(パジャマのままでよいのです!)
パンデミックの前から、リモート勤務は既に増加傾向にありました。ほとんどの従業員は、自分の好きな場所(自宅、コーヒーショップ、ホテル、空港など)で自由に仕事ができ、時間の融通が利くことを高く評価しています。また、月曜から金曜までの朝9時から夕方5時までのオフィス勤務の単調さから逃れるためにも、リモート勤務の良さについて多くのことが言われています。一部の従業員にとっては、柔軟な労働条件は、休暇、昇給、さらには退職金制度よりも魅力的です。SmallBizGenius社によると、従業員のリモート勤務を許可している企業は、許可していない企業に比べて従業員の離職率が25%低いと報告しています。さらに、少なくとも月に一度はリモート勤務をしている人はそうでない人と比べて、幸せで生産的であると感じる満足度が24%高いという結果が出ています。この調査によると、リモート勤務は従業員にとっても企業にとってもWin-Winの状況であり、従業員はより柔軟性と生活の質の向上を享受し、企業は従業員の満足度の向上と離職率の低下というメリットを享受しています。
企業が再開し始めている今でも、一部の従業員はリモート勤務がもたらす新しい自由を高く評価しており、リモート勤務を手放したくないと考えています。また多くの従業員は、オフィスでの気晴らしが少ないため、自宅での仕事の方がより生産性が高いと考えています。また、毎日オフィスに車で出勤したり、コーヒーを飲みに行ったり、ランチタイムにサンドイッチを食べに行ったりしなくなり、ガソリン代や食費を節約できます。経済が徐々に再開し始めたとは言え、社会基盤を支えるエッセンシャルワーカー以外の労働者のほとんどは、以前に比べてオフィスへの出勤頻度が減っています。パンデミックが収まるまでは、企業の従業員が健康を維持し、外出を最小限に抑えようと努力しているため、この傾向は続くと思われます。この新しいレベルの柔軟性を好む人もいれば、調整に本当に苦労している人もいて、今日のバーチャルな世界の「ダークサイド(暗黒面)」を示しています。
リモート勤務:短所
企業や従業員はつまり独自の状況や個人的な嗜好に関係なく、リモート勤務の状況に強いられたわけです。従業員にリモート勤務の特権を与えることと、パンデミック時にオフィスを一時的に閉鎖すること(それによって従業員にリモート勤務を強制すること)は全く別です。一方で、学齢期の子供たちも家に引きこもっており、多くの働く親にとっては悪夢となっています。幼い子供を一人で家に置いておくわけにはいかないことは誰もが知っていることですから、保育園を確保できない限り、多くの働いている親たちは子供と一緒に家にいることを余儀なくされるでしょう(たとえオフィスに戻りたいと思っていても)。そして、今学期の最後の3ヶ月間が何かを教えてくれたとすれば、家で子供と過ごすことは、生産的な仕事環境には好影響を与えないということです。そのため、在宅勤務はオフィスで発生する邪魔は少なくなりますが、パンデミックの影響で、家族との距離が持続的に近くなり、回避することができない大きな障害が発生します。
たとえ親でなくとも、リモート勤務フローへの移行を完全に受け入れているわけではありません。子供がいてもいなくても、職場と自宅の拠点が同じであれば、生活を「区分け」することは非常に困難です。個人的な生活と仕事を切り離したい人にとっては、オフィスが食卓やテレビ、その他の家庭の家族から文字通り数歩しか離れていない場合、これは不可能に近いかもしれません。勤務の開始時間と終了時間が明確に決まっていないと、もう一本メールに返信したり、家事に気を取られたり誘惑が強くなります。物理的な制約があると、この課題を克服することはできますが、”一日中オフィスに居る “ことができないとなると、かなりの規律が必要となります。
グーグルやツイッターのような大手企業が勤務条件を緩和している今、リモート勤務は未来の波のように思えます。しかし同時に、このバーチャルへのシフトが長期的に持続可能なのか、それとも有益なものなのかは、まだ見極められていません。1,000人以上のリモート従業員を対象としたTwingate社の調査によると、パンデミック時のリモート雇用は多くの従業員のワークライフバランスを乱しています。その結果によると、45%の従業員がパンデミック期間中、オフィス勤務時よりも多くの会議に出席したと回答していたのに対し、会議への出席数が減少したとの回答は21%でした。さらに、40%がリモート勤務中にビデオ通話による精神的な疲労を経験したことがあると言います。
その他の問題としては、モチベーションの低下、通常勤務での絶え間ない中断、職場文化からの孤立感などが挙げられています。ビデオ通話は相手を見たり聞いたりすることを可能にしますが、同僚と物理的に近くにいることに代わるものはないと主張する人もいます。ボディーランゲージでは、多くのことを話していますし、社会的な交流を好む人は、ビデオ通話では多くのことが伝わらないことに気付くでしょう。パンデミックの時代になって、フェイスマスクや社会的な距離感を保つことは必要ですが、これらの対策が永続的なものにならないことを願っています。そのうち、バーチャルな環境では実現できないオフィスでの雑談や仲間意識が戻ってくるといいですね。
誰か子供たちのことを考えてくれませんか?
COVID-19の大流行は私たちの生活をひっくり返しただけでなく、子供たちにも影響を与えています。それは確かに何人か学生は春に起こったリモート教育に迅速に対応し、さらにはバーチャルの教育でも成功したことは事実であるが、これはすべての(またはほとんどの)学生がそうであったわけではありませんでした。EdWeek Research Centerによると、教師の2/3から3/4が、リモート授業中の生徒の学習意欲がパンデミック前よりも低下していると回答しており、2020年の学期の間に学習意欲はさらに低下しているとのことです。
新年度は直ぐそこまで来ていますが、秋学期は他の学期とは異なるものになることが予想されます。多くの地区は、この時期になっても、具体的な計画の実施に消極的なままです。リモート教育が必ずしも効果的とは限らないという証拠があるにもかかわらず、一部の学校では、すべてをバーチャルなアプローチに移行することを検討しています。また、リモート学習と対面学習を組み合わせた「ハイブリッド」のアプローチを検討している学校もあります。これにより、リモート教育にあまり反応しない生徒の問題は軽減されるかも 知れませんが、家庭では、教育の場所や形式が異なるだけでなく、毎日の一貫性が 乏しいという複雑な問題に対処しなければならないため、苦労することになるでしょう。先に述べたように、どちらの状況も、働く親にとっては悪夢となるでしょう。さらに、リモート勤務に苦労している親の中には、バーチャル学習に苦労している幼い子供を育てている人もいます。
結論
多くの疑問が残り、将来についての不確実性が高い中、今後数ヶ月の間に私たちの個人的な生活や仕事上の活動に何がもたらされるのかは誰も予想がつきません。パンデミックは、私たちが理解しているように世界に長期的、あるいは恒久的な変化をもたらす可能性が高くえ、理想的な状況については誰もが異なる意見を持っています。完全にリモート環境で成功する社員もいれば、従来の朝9時から夕方5時までの生活の平凡さを切望する社員もいます。リモート教育を受け入れる親もいれば、子供の教育や情緒的な幸福感を心配する親もいます。簡単な答えはなく、パンデミックの状況は流動的であるため、意図した計画が一瞬にして変更される可能性があるのです。
しかし、一つ確かなことは、明日の職場として成功するためには、企業は、どんなに複雑なことであっても、すべての従業員の希望に対応できるだけの機敏さが必要であるということです。一部の従業員にはメリットとみなされるかもしれない雇用施策は、他の従業員には不利益とみなされる可能性があります。従業員の幸せを維持するためには、万能な取り組みはありませんので、パンデミック中も、そしてその後についても、可能な限り柔軟に対応して行くことが重要です。
By | Keypoint Intelligence |
---|---|
Published | August 20, 2020 |
原文 | Distance Working/Learning During a Pandemic: Pros and Cons |