2016年に注視すべき重要なトレンド(WhatTheyThink?)

年度末において、次年度の事業戦略計画を策定する企業は少なくない。今後どのようなトレンドが会社に影響を与えるかを知ることができたら、計画策定に役立つであろう。当記事では、近い将来起こり得る3つのトレンドについて触れたい。これらは、商業印刷会社や、社内印刷部門の収益に成長をもたらすであろう。


2016年の重要トレンド

#1: 従来製品とサービスの復活

最初のトレンドについては、以前私が書いた「MSP(マーケティング・サービス・プロバ イダー)への業態変革が鈍化し、本業のプリントサービスへ回帰」という記事の中で詳しく述べている。我々の業界は、デジタル印刷、ワイドフォーマット印刷、オフセット印刷を中心とした従来印刷など、本業へ回帰しているのだ。 InfoTrendsの「米国生産ソフトウェア投資予想レポート」によると、いま最も成長している事業は、ゼロから立ち上げたものではない。長年培ってきた本業が平均より高い成長を見せているのだ。


#2: 勝ち組の印刷会社や社内印刷部門が成長している理由は付加価値サービス

従来製品の売上げが伸びるのはありがたい。ただ、厳しい価格競争に常にさらされていて儲からないことも確かだ。そこで、第二のトレンドは、付加価値製品やサービスを作り、紹介し、育てることである。

わかりきっているといえばそれまでだが、調査の結果、印刷以外の付加価値サービスの比率が高い印刷会社ほど、高く成長している。これが、必ずしも社内印刷部門となるわけではない。印刷会社が提供する付加価値サービスであるマーケッティングやITなどは、社内グループの他部門が既に提供しており、そちらの方に任すのが適切であるとの経営的判断があるからだ。そうすると、社内印刷部門の出る幕がなくなってしまい、事務用品のような消耗品などの印刷に留まってしまう。会社の経営戦略に沿った貢献ができなく、結局アウトソースと比較され、その存在意義が問われてしまうのだ。厳しいかもしれないが、可変データ印刷や、クロスメディアプログラムの製作などを、付加価値サービスの仕事として勝ち取らないといけない。それによって、会社の財務目標や経営戦略に沿った事業を展開することができるだろう。中には、郵便発送やデータセンターなど付加価値サービスを網羅している社内印刷部門も既にある。その場合、会社の取引量がどうなるかによって、サービスの処理量に直接影響してしまう。


#3: もっと注力すべきことは稼働率

三つ目のトレンドは、製品やサービスにまつわるものではない。会社がどのように設備を使っていくかによって事業の業績を測定し、ベンチマークする、いわゆる稼働率についてだ。長年我々は、従業員あたりの売上や、利益率などの指標を追ってきた。今日、収益が伸びている成長企業は必ずしもこれらの従来型の指標を追っていない。

どの業界でもそうだが、時代が変わるとともに設備、従業員のスキル、業務手順なども変わっていく。最も成功している企業の姿を正確に表す次世代の指標を見出さないとならないかもしれない。InfoTrendsでは、過去数年間、従来型に代わる指標を試してきた。そこで明らかになったことは、勝ち組の印刷会社は、低迷または縮小している印刷会社に比べて、特定の設備の稼働率が高い傾向にあることがわかった

以下の数値は、成長に連動させた各設備の稼働率を示したものだ。業績が低落している会社はオフセット印刷機を使う傾向にある一方、成長している会社は単票(カットシート)や連帳(ウェブ)のデジタル印刷機の稼働率が高いことがわかる。


#3: まとめ

我々が調査したほとんどの印刷会社は、従来製品とサービスの売上げが伸びていることについて喜んでいる。存続のために日々戦っている業界としてはうれしいニュースであろう。ただ手放しで喜べないのは、購買の現場で激しい価格競争が繰り広げられていることに変わりないことだ。そのため印刷会社が付加価値サービスに注力する理由となっている。その内容は会社によって異なるが、デザイン業務、Web to Printサービス、可変データプリント、ワイドフォーマット印刷、フルフィルメント、郵便発送、マーケッティング、クロスメディアサービスなどで、それらに取り組んでいる印刷会社は確かに成長しているのだ。

企業が業績を計測することは当たり前だが、必ずしもそれらが業績改善の施策に直結するとはかぎらない。一時間当たりの入稿、出力データ数、ページ数、封入物点数などの生産情報はいまだに使われているが、どちらかと言うと出遅れた印刷会社が使う傾向にある。

稼働率がなぜ試されているのかと言うと、製造に於けるボトルネックの特定や、組合せ訓練などに使える有用な指標だからだ。ボトルネックが明らかになれば、閑散としている工程から、忙しい工程に人員をシフトするための相互補助訓練(クロストレーニングプログラム)を実施することができる。そうすることによって、生産効率が上がり、コストが下がり、結果として売上げが伸びていくのだ。

 

 

  

whattheythinkmini
By Howie Fenton
Published 2016年12月22日
原文 http://whattheythink.com/articles/76920-three-critical-trends-2016/

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