次世代プロダクション・インクジェット: Canon Océ VarioPrint i300 枚葉インクジェット機+他 (What They Think?)

次世代プロダクション・インクジェットの発表は早く、激しい。 Hunkeler Innovationdaysは、期待通りこれらの新しい技術を、生産現場で稼働する後加工機とともに展示する完璧な機会であった。前のレポートでロールからシートに切り出す新しいXerox Rialto 900 をご紹介した。 このレポートではVarioPrint i300 枚葉プロダクション・インクジェット機をご紹介する。 さらに最近発表されたOcé ImageStream 2400とColorStream 3000Z 輪転機もご紹介する。


枚葉プロダクション・インクジェット機

Océ VarioPrint i300は開発に時間がかかった。 数年前から開発名称ナイアガラという機械の噂を聞きつけて、この発表にいたるまで随分と我慢していた人もいるようだ。 待つのは終わった。そしてそれは非常にユニークな商品となった。 これは枚葉のインクジェットとして初めての機械ではない。しかし時間8,700枚を両面で印刷できるのは現在では最速である。 比較のために、以前のレポートをご紹介しておく。

http://whattheythink.com/articles/56067-drupa-2012-inkjet-drupaagain-closer-look-fujifilm/(英文)

http://whattheythink.com/articles/56336-drupa-2012-inkjet-drupaagain-closer-look-screen/(英文)

Canon-Oce-VarioPrint-i300枚葉インクジェット機外側

Canon Oce VarioPrint i300枚葉インクジェット機外側

VarioPrint i300は両面印刷機であるが、片面、両面ともにまったく同等の生産性である。 これまでの枚葉インクジェット機が両面印刷時には生産性が落ちる、または紙をオフラインで反転させなければならないのと比較して、ここが決定的に異なっている。VarioPrint i300は標準でペーパーインプットモジュール (PIM)1台が装備されており、80gsm紙が最大4,600枚までのトレイが4段組み込まれている。 紙の斤量は60 -300 gsmまで印刷可能である。 オプションとして2台目のPIMも追加が可能で、合計9,200枚を積載できる。 通常のPIMは最小8” x 8” 最大12.6” x 19.2”の紙を利用可能だ。 さらにオプションの専用大判トレイによって13.8” x 19.7”まで可能となる。 その他のインクジェット機とほぼ同等のメディア、標準の非コート紙、コート紙、インクジェット用紙等が利用可能である。

下の図を見ていただくと、搬送系は極めてユニークで興味深いのをご理解いただけるだろう。

Canon-Oce-VarioPrint-i300枚葉インクジェット機内蔵

Canon Oce VarioPrint i300枚葉インクジェット機内蔵

PIMから用紙が排出されると、VarioPrint i300のつなぎ目の無いステンレスのプリントベルトに乗せられ、そのベルトの細かい穴からのバキュームエアで機内での動作が制御される。 プリントヘッドは一式のみで、紙の反転機構をもち、Screen Truepress Jet SXと少し似ている。 用紙は、搬送、印刷、反転、そしてもう一度搬送され裏面の印刷を行う。 プリントベルトと湿度制御はスピードを維持しながらばらつきを抑えている。 さらには信頼性の高い搬送とメデイアの変更をつなぎ目なく行うことを実現している。

以前にお話したように、枚葉機のインクジェットの搬送は容易ではない。生産時にメディアの先端が浮き上がるのを考えるだけで十分であろう。 色々なリスクがあり、ジャム等によって用紙の先端がヘッドを直撃しかねず、信頼性の高い搬送機を設計するのが、メーカーにとって最大の課題であった。 搬送機の設計に加えて、Canonは自動検査装置を機内に内蔵した。 印刷工程直前に、フルスピードで動くメディアの監視と検査用に”見張り番”を取り付けた。 品質基準を満たさない何らかのエラーが用紙に発見されると、生産を止めることなくその用紙はトップトレイに排出される。

あらゆるインクジェット機は、用紙に乗せられた水性インクの水分を乾燥させねばならない。VarioPrint i300は各種の乾燥方式を統合して設計されている。Canonは4種類の乾燥方式を利用した:用紙の状況を事前に整える一定温度の加熱ドラム; 炭素赤外線 (CIR)による用紙外部の急速加熱; 熱気循環による乾燥工程の加速; そして最後にあらゆる湿度をエアで吸い上げる機構である。 標準的な乾燥時間は300in/分で2秒。乾燥が余分に必要な素材の場合はプリント速度を200in/分に減速する。

大容量スタッカー(HCS)は6,000枚が利用可能である。 さらに将来のサードパーティーの後加工機にインラインで対応できるようにDFDインターフェースを搭載し、Océ VarioPrint 6000 シリーズとの互換性を保っている。 デューティーサイクルはA4サイズ換算で、月間100~1000万枚(両面の場合、50~500万枚)を推奨している。本体とPIM1台、HCS1台でサイズは31.2’ x 6.5’ x 8.2’ であって重量は5500-6600 lbsとなる。


VarioPrint i300 画像

画像は既存のColorStream 画像テクノロジーによっている。ドロップオンデマンド、ピエゾ方式で人気の高い京セラKJ4B 600 dpi 水性顔料用プリントヘッドを採用し、耐用期間は長く3~5年に及ぶ。 印刷解像度は600x600dpiであるが、Canonによれば、液的の粒径を12ピコリットルあるいはそれ以下で可変させることにより1200dpiのプリントヘッド相当の品質であるという。 液的の粒径は各メディアに対して、DFEのメディアバリデーションプロセス (MVP)によって定義される。 これは30kHzのプリントヘッドの稼働周波数を用いており、最大毎秒8千万滴を射出可能である。1ヘッド当たり2,656個のノズルのものを各色3個利用している。さらに2つのプリントヘッドのセットがオプションで搭載可能となる。 画像システムは ColorStream画像テクノロジーに依存しているが、インクはVarioPrint i300専用に開発され、輪転のシリーズ機よりも速度が落ちるのも相まって、画像品質は向上している。 水性顔料インクを利用しており、広いガマットを各種のメディアで実現している。

二種類の品質管理システムを搭載している。まずはノズルの機能停止をインラインで検査するシステムである。 このシステムはオペレーターがジョブの合間にノズル機械に流す機能確認シート (NFD)を利用する。NFD シートはスキャンされトップトレイに排出される。 ノズルの機能停止が確認されると、システムは自動で隣のノズルの液的を大きくする、または他の色で代替することによって補填される。 次のシステムはプリントヘッドのメンテナンス自動ルーチンである。 プリントヘッドはノズルが詰まらずインクが打てる環境にあるが、印刷機が稼働中に、印刷に利用されないノズルも最小の液的を射出している。 さらに印刷稼働中にも紙間にもピエゾのパルスによってヘッドの中のインクは攪拌されている。印刷機が停止している間は、プリントヘッドはバキュームメンテナンスステーションに格納される。ノズルは自動で全てのインクをパージし、その後ワイパーブレードで拭われ最後のウェットティッシュの素材で拭かれる。


フロントエンド

i300は、Océ PRISAsync コントローラーのプラットフォーム上に同社の輪転インクジェット用のOcé SRA®MPコントローラーを搭載して制御されている。スケーラブルなマルチプロセッサーを用いて、本体をフルスピードで回している。スケーラブル・ラスター・アーキテクチャ (SRA)によって、特定のプロセスの要求に対して、メモリーとRIPのモジュールの追加によって対応が可能だ。 AFP/IPDS、PDFにはネイティブで対応している。APPE (Adobe PDF Print Engine)を搭載しているOcé PRISMAproduction プリントマネージャーによってPCL、Line Data、LCDS、Metacode、Postscript、PPML、TIFF、VIPPは対応可能である。 Océ PRISMAsyncデジタルフロントエンド(DFE)は Canon Océのフロントエンドの基礎であって、コンスタントに改良されている。

VarioPrint i300の最初の設置はドイツのT-Systems社を予定している。 Canonは既に受注を開始しており、Canonは2015年中に4機を米国に設置予定ですでにIWCO社には設置されている。 VarioPrint i300の推定価格は$1 MM (US)=1億2000万円以下である。


ColorStreamとImageStreamの新製品とアップグレード商品の発表

Océ VarioPrint i300の新製品発表に加えて、CanonはColorStream 3000Zを発表した。このモデルはより小規模な環境、あるいは片面印刷、Z折が必要な環境向けに設計されている。 ColorStream 3000よりも設置面積は30%少ない。 17/21.25”の印字幅を持ち、48-127 m/分の速度、顔料、プレミアム顔料、染料、セキュリティインクから最大6色を選択できる。

CanonはImageStream 2400も発表した。ImageStream 3500のシリーズ機で最大20.5”幅のメディアの2アップに対応可能である。 プリント速度は160 m/minでA4換算で2154枚/分である。 最初の設置は2015年の第4Qを予定している。


結論

インクジェットは初期導入段階を終え、急速にメインストリームに移行しつつある。事実、Canonは ColorStreamを500台設置した、と発表した。 HPは既存設置機によって毎月40億枚の印刷を行っており、年率平均34%成長していると発表した。 これら以外の数多くの競合他社からのプレス、技術発表に加えて、新しく進化したインクと幅広いメディアによって、プロダクション・インクジェットは近い将来必ず商業印刷のメインストリームとなると確信する。

次世代プロダクション・インクジェットには、これまでは失望さられていない。品質は著しく向上し、革新は感動的だ。しかしながらこれら一連の発表に加えてさらに追加も予定されているようだ。ここは一息入れて、整理を行うよいタイミングであろう。次回ではプロダクション・インクジェットの現状、動き、そして将来について考えてみたい。

 

 

  

whattheythinkmini
By David Zwang
Published 2015年3月2日
原文 http://whattheythink.com/articles/72603-production-inkjet-next-wave-canon-oce-varioprint-i300-sheetfed-inkjet-press-more/

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