大手企業は、顧客に自分の事業について伝える際、信用力のあるプロフェショナルとして装いたいもの。大手企業の市場は、適切なマーケティング戦略と実行力を用いれば、印刷会社にとって大きなビジネスチャンスとなろう。この記事は、InfoTrendsの調査に基づき、多岐に渡る業種の大手企業の変化するニーズを、印刷会社がいかに満足させるかについて取り上げる。
先週の記事では、InfoTrendsの最近の調査、「ミクロからメガまで:ビジネスコミュニケーションのトレンド」Micro to Mega: Trends in Business Communications,の結果をもとに中小企業のニーズについて取り上げた。今週は、従業員500人以上の大手企業に焦点をあてたい。米国勢調査のデータによると、大手企業は18,000社におよび6,000万人を雇用している。InfoTrendsは、大手企業のマーケティングに携わるマネージャー、上層幹部、経営者など800人を対象にアンケートを実施し、マーケッティングコミュニケーションのニーズについて調査した。対象業種は以下の通りである。
- 自動車
- 教育
- 金融サービス・保険
- 政府
- 医療
- 宿泊
- 製造・医薬品
- 小売
- 公共料金・通信
大手企業のコミュニケーションのニーズは、名刺などコーポレートアイデンティティ関連、販促資料、DM、メール、ウェブなどディレクトマーケティング関連、POS関連資材、請求書などトランザクションドキュメント関連、ニュースレターなど出版物関連など、広範囲にわたる。大手企業はコミュニケーションする際、信用力のあるプロフェショナルとして装いたいもの。印刷会社が適切なマーケティング戦略を用いて行動すれば、中小企業同様に、大手企業の市場は大きなビジネスチャンスをもたらすであろう。
大手企業にとって何が重要か
大手企業に顧客へのコミュニケーションにおいて何が重要かと聞いたところ、新規顧客獲得、ブランド認知の向上、新しい製品やサービスを顧客に提供するなどが上げられた。これらは、調査した全ての業種において、規模の大小に関わらず、重要視されている。
ビジネスの目標を達成する
厳しい経済環境の中、大手企業のマーティング担当者が求めているのは、複数のメディアチャネルにまたがる顧客とのコミュニケーションを可能とするソリューションだ。製造企業であろうと、保険会社であろうと、大学であろうと、全て新規顧客獲得や既存客維持するためのマーケティングツールを求めている。大手企業のマーケティング予算は景気後退時に比べれば増えている。だが、投資に見返りを確実にすることはそう容易いことではない。全ての業種において、年間コミュニケーション支出は、平均135億ドルで、うち印刷は3,870万ドルで29%を締める。印刷会社にとってこれは大きなビジネスチャンスといえよう。
2016年のマーケティング支出は、穏やかな成長が期待されるだろう。大手企業の50%が、かなりの増加、又は、穏やかな増加を見込む。一方、1/3が殆ど変わらないと回答している。
変わりつつあるマーケティングミックス
大手企業のマーケティング支出は増加していくだろうが、その一方、マーケティングミックスが変わりつつある。InfoTrendsの調査によると、マーケティングチャンネルが、従来の印刷マスメディアから、メール、Web、モバイルなど印刷以外のメディアへの大きくシフトしているという。印刷は、コミュニケーション支出の25%で、2年後も中核を占めることには変わりないが、そのシェアは徐々に落ちていくであろう。今後大きな成長が見込まれるのが、ネットとモバイル。これらの3つのチャネルは現在支出の30%を占め、2017年には33.6%までに拡大していくだろう。
印刷会社のチャレンジ
賢い印刷会社は、複数のチャネルに渡ってキャンペーンを配信し、最適な結果を出せる力量を持つようになるだろう。期待されるサービスのレベルは高いが、印刷会社にとっては、特定の業種に注力することにより、大量のボリュームを確保することができる。大手企業のニーズを満たすには、印刷会社な何をすべきだろうか。
大手企業のパーソナル化施策のお手伝いをする
大手企業のマーケティングキャンペーンの61%以上が、パーソナル化、又は、セグメント化されている。顧客とのコミュニケーションは、今後、マスマーケティングよりかターゲット化されたアプローチを取っていくであろう。
調査した業種の中で、どこがターゲット化されたカスタマコミュニケーションを実践していているのだろうか。自動車産業が最も高く66%。逆に最も低いのは小売業で52%だが、それでも半数以上が実践している。可変プリント関連の売上についていえば2014年~2019年の年間成長率は15%を見込む。大手企業にマーケティングサービスを提供するには「カスタム化とパーソナル化の力量」が欠かせないものとなっているのだ。
印刷会社が、この事業で成功するには、データマイニングや分析への投資をしなくてはならない。社内にそのような人材がいなければ、新たに雇用するか、分析サービスを提供する会社と提携することにより、データ経済圏で発展するための分析スキルを提供できるようになるであろう。
クロスメディアは必須
中小企業のマーケティングキャンペーンは、大よそ3つのメディアタイプを使う。印刷だけを展開している中小企業は、機会損失を招くだけではなく、フルサービスアプローチをとる競合からビジネスを奪われてしまうリスクをはらむ。
大手企業は、オフラインとネットメディアを統合させ、より良いカスタマーエクペリエンスを提供するために、クロスメディアエンゲージメントを支援する印刷会社を求めている。調査によると印刷された販促資料の35%が、なんらかの形でネットチャネルと連動しているという。クロスメディアキャンペーンを行うためのツールは、巷にたくさんあり、簡単に導入することができる。ツールの選択肢を検討し、印刷、モバイル、ソーシャル、ネットにまたがって戦う手段を構築することはもはや待ったなしだ。
簡単であることが重要
大手企業は、印刷であろうと、デジタルであろうと、マルチチャネルであろうと、彼らのニーズに迅速に対応できる簡単かつ信頼できるサービスを求めている。印刷会社がこれらを満たすには、ネットを介してサービスを提供できるようにならなくてはならない。大手企業各社に対応したカスタム化された専用ポータルサイトを構築し、受発注できる体制を整える必要があろう。大手企業が2015年に発注した印刷物の34.7%はネット経由。2017年になれば42.7%となろう。これは、大手企業市場のネットチャネルの発注業務が11.5%成長していくことを意味する。
現状、高品質なWeb to Printソリューションを顧客に提供していなければ、真剣に検討する必要があろう。早く動かなければ、大手企業市場のビジネスチャンスを逃してしまうかもしれない。
クロスメディアコミュニケーションのワンストップショッピング
大手企業に印刷会社を選ぶときに最も重要なことは何かと聞いたところ、納期厳守、印刷品質、ベストバリュー、競争力ある価格が上位にきた。しかし、これらの条件は今日の市場では当たり前。最低限、それらを満すことができなければ、商売を続けることはできないだろう。印刷会社が大手企業の市場で差別化するには、幅広いサービスをワンストップショッピングで提供し、チャネル間を隔たりなく対応できることが必要だ。今日のコミュニケーションは益々複雑になっているため、大手企業にとって、従来の印刷会社が提供する製品やサービスでは物足りない。新規顧客獲得や顧客維持のため、多岐に渡るチャネルを指南してくれるパートナーを欲しているのだ。賢い印刷会社は、印刷に加えて、マーケティング戦略、データベースマーケッティングサービス、クロスチャネル機能、ROI分析などを取り揃え、はがき、チラシ、カタログなど水平的に提供すると同時に、各業種独特な専門的ノウハウをも展開する。コンサル的なアプローチを取ることにより、マーケティング担当者の戦略的パートナーとしてみなされ、結果、売上がついてくることとなる。
まとめ
InfoTrendsの「ミクロからメガまで」の調査で明らかになったことは、大手企業が印刷会社に高い期待をいだいていることだ。コンセプトの制作から印刷物を郵送するところまで、フルレンジのサービスを提供できるパートナーを求めている。加えて、ひとつのチャネルに縛られなく隔たりのない全チャネルにおいてコミュニケーションを行うための手助けを求めているのだ。大手企業の戦略や方針について熟知し、測定可能なクロスチャネルアプリケーションソリューションを提供することがでる印刷会社は、2016年において勝者となろう。
By | Barb Pellow |
Published | 2016年2月18日 |
原文 | http://whattheythink.com/articles/79018-selling-enterprise-market/ |
翻訳協力 | Mitchell Shinozaki |