中小企業市場へのマーケティングサービスのビジネスチャンス(WhatTheyThink?)

大手企業と同じく、中小企業も事業拡大のため信用力をあげたいもの。それには、コミュニケーションが欠かせない。印刷会社にとって、中小企業市場は適切なマーケティング戦略と実行力を用いれば、大きなビジネスチャンスをもたらすだろう。この記事においては、最近のInfoTrendsの調査レポートを取り上げ、印刷会社が中小企業の特定の業種、業態に集中することによって、いかに仕事量を積み上げて確保するか、その手段などを見出したい。

建設、美容室、歯医者、弁護士事務所、不動産、家族経営の小売店など、米国企業の大半を占める中小企業。米国の国勢調査によると、米国の従業員500人規模以下の企業は600万社にのぼり、10名以下規模の会社は450万社存在するという。

名刺など企業のアイデンティティ関連、販促資料全般、ダイレクトトマーケティング関連(DM、メール、ウェブなど)、POP類、請求書などトランズアクションドキュメント関連、ニュースレターなど出版物関連など、中小企業市場のコミュニケーションに纏わるニーズは多様だ。 大企業と同じく、中小企業もそのビジネスを語るにあたって、信用度と熟練度を高く表現することが必要である。この市場は印刷会社が、正しい市場戦略をとることよって大きなチャンスがある。特定な業種や業態に集中することにより、反復可能な営業方法が利用でき、仕事量を積み上げるビジネスチャンスがあろう。中小企業のマーケティング担当者は、新規顧客獲得や顧客維持を助けてくれ、そして複雑なマルチチャネルコミュニケーションを指南してくれるパートナーを探しているのだ。


中小企業にとって何が重要か

InfoTrendsは最近「ミクロからメガまで:ビジネスコミュニケーションのトレンド」Micro to Mega: Trends in Business Communications,を完成させた。延べ1,000社以上の中小企業の経営者や幹部にアンケート調査を実施し、マーケティングコミュニケーションのニーズで何が重要かを聞いたところ、企業規模の大小に関わらず、新規顧客獲得、顧客維持、ブランド認知が最重要との回答が多数を占めた。

事業を発展させるために、ブランドアイデンティティやマーケティングが欠かせないことは、中小企業も大手企業もかわらない。厳しい経済状況の中、中小企業が求めているのは、あらゆるメディアチャネルを使ってでも、顧客にたどり着き、コミュニケーションを可能とするソリューションだ。飲食店であろうが、美容室であろうが、不動産屋であろうが、ドライクリーニング屋であろうが、中小企業は、新規顧客を呼び込み、既存客を維持できるようなマーケティングツールを求めている。問題は、中小企業のマーケティング予算が、大手企業と比べるとはるかに小さいこと。全ての業種において、年間コミュニケーション支出は、平均96,000ドルで、うち印刷は35,000ドルで35%を占めるのだ。これは小口の仕事を積み上げていく印刷会社にとって、売上を上げる大きな機会である。

 


業種別コミュニケーション年間平均支出

表1:貴社のコミュニケーション年間支出はだいたいどの位ですか?(業種別平均値)


業種別コミュニケーション年間平均支出

表2:貴社のコミュニケーション年間支出はだいたいどの位ですか?(業種別平均値)

2016年のマーケティング支出は、穏やかな成長が期待されるだろう。回答者の50%が、かなりの増加、又は、穏やかな増加を見込む。一方、43%が殆ど変わらないと回答している。平均成長率は業種によって異なるが、2.2%から3.9%の間である。その中で一番高い成長が期待されるのが、金融サービスだ。

 


コミュニケーション支出の配分(平均)

貴社のコミュニケーション支出の内訳は?


印刷会社の課題

よく理解している印刷会社は、最適な結果を出せるような複数のチャネルに渡ったキャンペーンを実施するだろう。中小企業が期待するサービスのレベルは高いが、印刷会社にとっては、ターゲットの業種から幅広く受注して注文量を集積できる機会である。では中小企業のニーズを満たすには、印刷会社な何をすべきだろうか。


中小企業のパーソナル化施策のお手伝いをする

以下の表の通り、中小企業の65%が、パーソナル化(1対1)、又は、セグメント化(1対少数)されたマーケティングキャンペーンを実施している。可変印刷を伴うこれらのキャンペーンからの売上は、2019年までの年間累積成長率が15%になると予測されている。中小企業のマーケティングサービスビジネスを取り込むには、カスタム化とパーソナル化を提供することが欠かせないのだ。


マーケティング・広告キャンペーンの種類

外部とのコミュニケーションの何パーセントが、以下のどれに相当しますか?

データマイニングや分析を出来るようになるには、人材や設備への投資をしなくてはならない。社内にそのリソースがなければ、分析サービスを提供する会社と提携すれば良い。データが中心の時代で発展するためには、分析スキルは必須である。


クロスメディアは必須

中小企業のマーケティングキャンペーンは、平均3つのメディアの種類を使う。印刷だけを展開している中小企業は、機会損失を招くだけではなく、全種類を展開するようなアプローチをとる競合からビジネスを奪われてしまうリスクをはらむ。

 


キャンペーンごとに使われるメディアタイプの数

カスタマコミュニケーションやマーケティングキャンペーンで使うメディアは何種類?

中小企業は、より良い顧客体験(カスタマーエクペリエンス)を提供するために、クロスメディアで顧客と結びつき(エンゲージメント)、オンラインとオフラインメディア(ネットと紙)を統合させるサポートが可能な印刷会社を求めている。調査によると製作された販促資料の49%が、紙となんらかの形でネットチャネルが連動していると回答した。クロスメディアキャンペーンを行うためのツールは、巷にたくさんあり、簡単に導入することができる。ツールの選択肢を検討し、印刷、モバイル、ソーシャル、ネットにまたがって戦う手段を構築することはもはや「待ったなし」だ。


簡単であることが重要

顧客は、注文にもキャンペーンの応募にも、簡単さを求める。印刷であろうと、デジタルであろうと、その混合(ミックス)であろうとも、顧客はそのニーズにあった簡単なソリューションを求めるであろう。それは印刷会社のサービスに、Webからアクセスすることから始まる。中小企業は、印刷物をウェブサイトであらかじめ設定されたテンプレートのカタログから、発注することが当たり前になってきている。2015年に中小企業が、発注した印刷物の33%はネット経由だという。2017年になれば45%となる予測されている。これは、中小企業向けの印刷市場のネット注文は18.8%成長していくことを意味する。

 


ネットを介して発注される印刷物

過去12ヶ月でネットを介して発注した印刷物支出の比率はどのくらいですか?2年後の支出はどの位を見込んでいますか?

現状で顧客向けにウェブトゥープリントを提供していなければ、真剣に検討する必要があろう。早く動かなければ、中小企業市場向けのビジネスチャンスを逃してしまうかもしれない。


専門的ノウハウとワンストップショッピング

中小企業に印刷会社を選ぶときに最も重要なことは何かと聞いたところ、品質、納期厳守、競争力ある価格が上位にきた。しかし、これらの条件は今日の市場では当たり前。最低限、それらを満すことができなければ、商売を続けることはできないだろう。中小企業にたいする本来の差別化は、専門ノウハウとワンストップサービスである。今日のコミュニケーションは益々複雑になっているため、中小企業にとって、従来の印刷会社が提供する製品やサービスでは物足りない。新規顧客獲得や顧客維持のため、多岐に渡るチャネルを指南してくれるパートナーを欲しているのだ。専門的ノウハウとワンストップショッピングを提供すれば、差別化ができるだろう。賢い印刷会社は、印刷に加えて、クリエーティブサービス、DMやメールのテンプレート、顧客リスト購入と管理、メールキャンペーン、自動コンタクトシステム、測定やトラッキング機能などを提供する。はがき、チラシ、カタログなどの一般的な商品で横展開すると同時に、各業界の特有な専門的ノウハウをも展開する。時間に余裕のない中小企業に対してマーケティングサービスのコンサルティングや戦略などを提供し、結果、売上と利益を増すことができるのだ。

 


印刷会社を選ぶとき重要な条件は何か

印刷会社を選ぶときに重要な条件は何か?(平均値)


まとめ

InfoTrendsの中小企業に関する調査で明らかになったことは、中小企業は、DMであろうと、ネットであろうと、小売であろうと、ひとつのチャネルを通じて提供される製品をどのように成功させるか支援を求めていることだ。更に、これを二つ以上のチャネルを通じてマーケティングを展開したいとも思っている。ただ、彼らはそれを自分達で実行する時間もお金もない。中小企業に、測定可能なデジタルのマーケティングを、業種別に、あるいは水平展開できるアプリケーションを提供することができるなら、その印刷会社は2016年の勝者となろう。これには、中小企業の市場について熟知し、創造的な市場展開戦略が必要である。個々は小さな仕事量であるが、中小企業市場の案件をかき集めることができれば、その市場を積み重ねることによって、大きなビジネスチャンスとなっていくであろう。

 

 

  

whattheythinkmini
By Barb Pellow
Published 2016年2月11日
原文 http://whattheythink.com/articles/78935-small-medium-sized-businesses-marketing-services-opportunity/
翻訳協力 Mitchell Shinozaki

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