パーソナライゼーション:失われた環 (WhatTheyThink?)

今日、生活者は企業のマーケッターとワンツーワンの対話に慣れてきているどころか、このような親密な関係を当たり前であると感じはじめている。今回のコラムは、DMやその他のコンテンツに生活者が触れたときに、どのように行動するのか、そして、趣向性などについて触れたい。

生活者と、親密かつ直接の(ダイレクトな)コミュニケーションを築き上げないといけない。企業のマーケッターは、ひしひしとそう感じているだろう。ちょっと前までは、生活者はテレビの周りで家族と団欒したもの。それが、今日ではパーソナルな携帯デバイスでウェブを閲覧したり、ビデオを見たりするようになった。生活者が企業のマーケッターとのワンツーワンの対話に慣れてしまっただけはなく、より親密な関係を当たり前に期待するようになってきているのだ。

四つの重要な質問

InfoTrendsは、「ディレクトマーケティングの印刷と付加価値サービスは成長のための戦略」(Direct Marketing Production Printing & Value-Added Services: A Strategy for Growth,)という調査レポートを2015年に発表した。この調査は900人の生活者を対象としたアンケートに基づく。DMなどのコンテンツに生活者が触れたときに、どのように行動するのか、そして、どのようなものを好むのかという趣向性などについて幅広い質問をした。その中で際立ったものが4つあったので紹介したい。


1. 生活者はなぜDMを開封するのか?

生活者がDMを開封する確率を上げるには、コンテンツが生活者の求めている情報にいかにマッチしているかに比例する。これを、マーケティング用語では、レレバンス(関連性)と呼ぶ。InfoTrendsの調査によると、生活者は自分の興味、又は、求めている製品・サービスのオファーや情報が提示されると、DMの開封率が高まるという。

 

関連性(レレバンス)は開封率を上げる


2. どういったタイプのパーソナライゼーションに気づいたか?

生活者にどのようなタイプのパーソナライゼーションに気づいたかと聞くと、最近購入した製品のクーポン、所有している製品に関連したオファー、または最近閲覧したウェブサイトに関連した販促プロモーション、生活者 の興味を反映したイメージなどが上位にあげられた。

 

パーソナライゼーションの種類


3. パーソナライゼーションによってDMを開封するきっかけをつくることはできるのだろうか?

以下の表が示すとおり、パーソナライゼーションはDM開封に大きく影響する。生活者の84%が、カスタム化が、DMの開封に若干、又はかなり影響したという。影響がなかったと答えたのは、たったの12%である。

 

カスタム化・パーソナル化の影響


4. 高度にカスタム化されたDMは、実際どのくらいの頻度で届くか?

興味を引くような、高度にカスタム化されたDMがどの位の頻度で届くかと生活者に聞いたところ、そのようなDMを実際に受け取ったことがあると答えたのは、全体の27%しかいないという。まさに、ここに失われた環があるといえよう。つまり、DMをより魅力的にするにも関わらず、高度にカスタム化されたDMを受け取った生活者は27%に過ぎないのだ。

 

カスタム化・パーソナル化の影響


マーケッターにとっての課題

なぜ、企業のマーケターは、DMをカスタム化するためのコミュ二ケーションン技術をもっと使わないのだろうか。その理由を3月31日のeMarketerの記事が物語っている。その記事に登場するDemand Metric and Seismicが行った調査によると、マーケターの59%がコンテンツをパーソナライズしないのは、そのようなことを実践するための技術を持っていないからだという。 同じく59%が、余裕とリソースがなく、53%が必要なデータを持ち合わせていないというのだ。

 

パーソナル化しない理由


企業のマーケターは、コンテンツをパーソナル化することによって、かなりのメリットが得られることは判っている。2015年6月に行われたCMO(最高マーケティング責任者)委員会の調査によると、半数以上がパーソナルコンテンツとデジタルインタラクションを提供することにより、レスポンス率とエンゲージ率が高まると言っているのだ。


理想と現実のギャップを埋める戦略をもっているか

企業のマーケターは、パーソナライゼーションを実践するための技術を持ち合わせていないと思いこんでいるかもしれないが、印刷会社はそれを可能とする技術が存在していることを知っている。技術はピンからキリまであるが、DirectSmileやXMPieなど懐に負担をかけないものがあろう。

印刷会社が適切なツールを導入すれば、生活者が求めるエンゲージメントと企業のマーケターが伝えたいコミュニケーションの間にある失われた環を結ぶ役割を果たすことができるであろう。それを実現するための具体的な設計図はないかもしれないが、印刷会社が成功するためのいくつかの鍵がある。以下の通りだ。

  1. まず戦略を策定すること: クライアントの事業の原動力は何か、組織が達成したい目標は何かを理解すべき。
  2. データを把握すること: アカウントプロフィールデータ、ロイヤリティプログラムデータ、属性、郵便番号、ジオロケーション、時間帯など顧客データソースの棚卸しをすべき。
  3. 対象市場へメッセージを配置していく: メッセージやオファーが受け手に関連性(レレバント)を持たせるためには、データをセグメントに分類し、それぞれの層の購買者のターゲット像を思い描き、特定しなくてはならない。(ペルソナ=外的人格の作成) 生活者は、取引会社と培ってきた関係やそれぞれ固有のニーズを満たしてくれるクーポン、オファー、イメージを求めるからだ。顧客のターゲット像を明確に定めたうえで、印刷会社は企業のマーケターと一緒に、生活者に対して、どこで、何を伝えるべきかを決める必要があろう。
  4. デザインのクリエーティブは重要: 情報と同等に重要なのが想像力。よい想像力をつくるには、驚き、コンテンツ、オファーのメリットを上手く調合しなくてはならない。チャネルが多様化し、コミュニケーションに常時スイッチが入っているオン状態であるため、生活者の注目を引くのは益々難しくなってきている。印刷会社は、クリエーティブに複数のチャネルにおいて、いかに生活者と対話して誘導するか、マーケターのお手伝いができる用意をする必要があろう。
  5. テストして、測定して、観測して、結果を報告する: 印刷会社は、入念に戦略を練ったあと、いくつかのマーケティングの目標に対する結果をクライアントに報告しなくてはならない。目標は必ずしも売上げに直結しなくてもいい。ブランド認知から口コミを作り出すまでその範囲は広い。重要なのは、顧客が目指している目標に対して、テスト、測定し、その結果を報告することだ。


まとめ

今日のコミュ二ケーションには、カスタム化は必須である。生活者が、自らに関連付けられた(レレバントな)情報と結び付く(エンゲージメント)ことを求めているからだ。しかしカスタム化されたコミュニケーションを作ろうとするとき、マーケティング部門は技術的、時間的、そして資源的な問題にぶつかってしまう。印刷会社にとっては、データの分析から始まって、クロスチャネルのマーケティングを提供する格好なチャンスといえよう。適切なツールに投資して、適切なスキルを実につけ、そしてクライアントと御社にとって良い結果をもたらそう。

 

 

  

whattheythinkmini
By Barb Pellow
Published 2016年4月7日
原文 http://whattheythink.com/articles/79777-personalization-missing-link/
翻訳協力 Mitchell Shinozaki

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