ダイレクトマーケティングのトレンドを読む(What They Think?)

毎年、米国のダイレクトマーケティング協会Direct Marketing Association(DMA)は、業界に関するデータを満載した統計実情調査書Statistical Fact Bookを出版している。 同調査書は、60の調査情報元やマーケティングの専門家から収集した統計情報を纏めたもの。本記事は、印刷会社からの視点で2016年度DMA統計実情調査書を読み解く。

要約

  • 販促印刷物を扱っている印刷会社は、クライアントの優先事項の変化を把握し、それに対応するために、重要なマーケティングトレンドに注目しなくてはならない。
  • Winterberry Groupによると「ダイレクトおよびデジタル」マーケティングへの2015年の支出額は1,532億ドル=約15兆3200億円だったという。
  • データを起点とするマーケティングの最優先事項は、マーケティングチャネルに関わらず、顧客にパーソナライズした体験を提供すること。
  • EconsultancyとOracleの2015年度クロスチャネルマーケティングレポートによるとデータの収集、クリーニング、適用などで直面する様々な課題が少なくなってきているという。
  • 印刷会社がダイレクトメールとデジタルコミュニケーションなど複数のチャネルを統合させ、一環としたメッセージを伝えることができるように手助けするツールがいくつかある。

業界の情報を追うことは忙しい人にとって大変かもしれないが、以下の通り、印刷会社にとってのメリットがあるといえよう。

  • 適切な経営判断ができる
  • 競争優位になるため早期に脅威と機会を発見することができる
  • 会社の戦略を形成するための重要な市場力学を把握できる
  • 将来の営業やマーケティングの商機に優位になるために備えることができる
  • 精通したビジネスパートナーとしてクライアントにみなされる
  • クライアントや見込客の信用と尊敬を得られる


2016年度DMA統計実情調査書からのデータの抜粋

毎年、ダイレクトマーケティング協会(DMA)は、業界に関する多彩のデータを掲載した統計実情調査書を出版している。調査書は、60の調査情報元やマーケッティングの専門家から収集した統計情報を纏めたもの。マーケティングコミュニケーション、マーケティング予算の配分、レスポンス率、その他の動向など主要なトピックを網羅している。販促印刷物を扱っている印刷会社は、お客様の優先事項の変化を把握し、それに対応するために、重要なマーケティングトレンドに注目しなくてはならない。DMA統計実情調査書は、市場の知見を得るため素晴らしい情報源となるので、印刷業者は注目すべきだろう。その抜粋は以下の通りである。


ダイレクトマーケティングは大きなビジネスで、印刷はそれに欠かせないもの!

ディレクト・デジタル支出のグラフ

2015年米国「ディレクト・デジタル」支出


Winterberry Groupによると「ダイレクトおよびデジタル」マーケティングへ支出された2015年の額は1532億ドル=15兆3200億円だったという。その内、DMは468億ドル=4兆6800億円で、2014年の460億ドル=4兆6000億円から増加した。


復活しつつあるDM

印刷は死なない。実際、DMは復活してきている。2016年実情調査書によると発送量は減ったものの、DMへの支出額は増えたという。郵便料金の値上げと、よりパーソナルで関連性の高い高品質なDMを、マーケティングの人間(マーケター)が投入し始めたことが理由のようだ。この種のDMは、発送量は少なくコストも高いが、レスポンス率が良い。適切に使えば、DMは効率を測定でき、オンラインマーケティングの補完となるであろう。印刷とデジタルメディアを併用するとよりよい効果が得られると盛んに言われるようになった所以である。


マーケティングの成功の原動力となるのがデータ

世の中は、データを起点とするマーケティング(データ・ドリブン・マーケティング)の時代に突入した。キャンペーンに価値をもたらすにはデータが欠かせないとマーケターは理解するようになったからだ。データ・ドリブン・マーケティングとは、データを原動力としたマーケティングのことを指す。その最優先事項は、最も関連性の高いキャンペーンを製作するために顧客データを分析し、パーソナライズされた顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)を提供することだ。


米国のデータ・ドリブン・マーケティングに携わる人口は100万人近くいるという。就業者数は、2012年と2014年を比べると49%上昇[1] 。売上げは35%成長し、2020億ドル規模となった[2]。EconsultancyとOracleの2015年クロスチャネルマーケティングレポートによると、データの収集、クリーニング、適用において直面する様々な課題が少なくなってきているという。回答者の44%がデータ管理プラットフォームへの投資に力をいれていて、33%が投資を予定している[3] 。一方、今、顕著化している課題は、マーケターの23%がデータをどのように分析するか悩みを抱えていることだ[4] 。全ての印刷会社は、今日の高度化したデータを基軸とした世界に参入するための戦略を検討する必要があろう。


メールを戦略的に使う

メールをいつどこで読むか、その管理の主導権を握る消費者。受信箱やスパムフィルタの使い方に慣れていて、マーケターにどの位の頻度で連絡するよう躊躇なく要求する。その43.8%は、企業からの情報は週単位であるべきと考えているのだ[5] 。また、59%は、配送無料やディスカウントなどを謳ったマーケティングメールが、購買に影響すると言う[6] 。パーソナライズされたメールは、顧客とのエンゲージメントを促し、統合マーケティングキャンペーンで印刷と連動させるには有効な手段である。印刷会社がダイレクトメールとデジタルコミュニケーションなど複数のチャネルを統合させ、一環したメッセージを伝えることができるようにするツールがいくつかあろう。


結論:情報収集するための時間を作れ!

2016年度DMA統計実情調査書は、クーポンやデジタルディスプレイなど小売業、カタログ、ネット、SEO、モバイル、ソーシャルメディアなどに関連した便利な情報やトレンドが満載だ。 最新のレポートから多岐にわたるトレンドや知見を一冊に纏めたものである。データの内容や情報元についてはともかく、印刷会社は自分が活動しているまたは新規参入としている市場についての最新のトレンドをウォッチする必要はあろう。 市場は激動している。重要なトレンドの情報に精通していなければ、置き去りにされるであろう。

参考文献


[1] “The Value of Data 2015: Consequences for Insight, Innovation & Efficiency in the US Economy,” John Deighton, Harold M. Brierley, Professor of Business Administration, Harvard Business School and Peter A. Johnson, recent Adjunct Professor, Columbia University.
[2] “The Value of Data 2015: Consequences for Insight, Innovation & Efficiency in the US Economy,” John Deighton, Harold M. Brierley, Professor of Business Administration, Harvard Business School and Peter A. Johnson, recent Adjunct Professor, Columbia University.
[3] Econsultancy and Oracle, “Cross-Channel Marketing Report,” 2015.
[4] Infogroup, “7 Key Insights into the Evolution of Data-Driven Marketing,” 2015.
[5] BlueHornet, “Consumer Views of Email Marketing,” 2015.
[6] BlueHornet, “Consumer Views of Email Marketing,” 2015.

 

 

  

whattheythinkmini
By Barb Pellow
Published 2016年6月30日
原文 http://whattheythink.com/articles/81266-direct-marketing-trends-2016/
翻訳協力 Mitchell Shinozaki

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