効率を追い求めると、ワークフローを少なくとも3つのカテゴリーに分類せねばならない。それはセルフサービス、ライトサービスとフルサービスである。それぞれのワークフローに、顧客にもっとも効率よく商品を届けるために、最適の労働と技術を適用するのだ。
「注文入力から請求書まで」とは良い言葉だと思う。簡潔に印刷ビジネスの入口から出口を指し示しているからだ。印刷業者へ投げかける質問は:そのワークフローは各駅で人手で停まる電車なのか、技術で自動化された急行電車なのか、である。
効率こそがこのゲームのルールだ。印刷会社で「注文入力から請求書まで」の中で、最もコストがかかっているのは人件費だ。ワークフローがより多くの労務を利用するならば、低収益、高コスト、そしてエラーが起こりやすいプロセスに嵌っていく。印刷のワークフローはもはや一種類ではありえない。印刷会社は、その顧客とジョブを見直し、少なくとも3種類のワークフローに落とし込み、それぞれのワークフローが最適最少の人手を利用して顧客の要望に応えるようにしなければならない。
現場の人達は、毎日ジョブを処理するだけで、手が一杯だ。各々のジョブにばかりに目が行ってしまい、全体的なパターンを把握することができない。私が大量のデジタル印刷のショップに入った時、現場の人達は、自動化は無理だと決め付けて言う。個々のジョブが違うのに、どうやって自動化するのか? 私は、現場の人達の疑問に答えるため、6ヶ月間苦労して作業指示書に書かれていたジョブの情報を収集した。確かに、各々のジョブの内容は異なっていた。ただ、それはコンテンツという視点でみた場合である。印刷生産の視点でみると、はっきりとしたパターンが見られ、相違より共通点の方が多い。
大きな視点でみると、少なくても3種類のワークフローに集約することができよう。
- セルフサービス・ワークフロー(特急)
- ライトサービス・ワークフロー(急行)
- フルサービス・ワークフロー(各駅)
多くの印刷会社がすべてのオーダーを一つのワークフローで処理している。殆どの場合が、フルサービス・ワークフローでの処理なのだが、これでは、労務費の無駄となり、納期もかかってしまうだろう。 処理量を増やすためには増員をせねばならず、成長の足かせとなる。これによってコストは上昇し、納期は遅くなり、労働集約であるがゆえに、お手玉と同じで、人に触れる接点が多くなればなるほど、玉を落す確率は増え、エラーを起こす。これでは競争力を減少させてしまう。
一方、セルフサービス・ワークフローは、技術が適用され人が殆ど介在しない。さらにお客様が、いつ、どこで、どのように印刷会社と交信するかを決めることが可能となるのだ。
セルフサービス・ワークフロー
セルフサービスでは、お客様自らワークフローを操作管理し、オーダーを入れることが可能である。だから、本来社内で行うべき業務をお客様に押し付けているようで、失礼だと誤解する印刷会社が少なくない。実は、その逆なのだ。お客様は、電話に伝言を残したり、メールの返信を待ったり、営業担当者の訪問待ち、といった、印刷会社の都合に依存する、効率の悪いマニュアルの対応を強制されている。お客様はそうではなく、自分で迅速に回答を得られる選択肢がほしいのだ。お客様の時間を取引についやすことは失礼かと思われがちだが、お客様は全ての取引で、いちいち印刷会社と対応することを面倒に思っているのだ。お客様にとってもコストがかかってしまう。ある調査によると、紙による発注書の作成や請求書の処理など調達業務費は一件の取引あたり、75ドルまでもかかるという。
セルフサービス・ワークフローでよく見られる“人間停車駅”は以下の通りである。
セルフサービス・ワークフローには、オーダーの入稿、プリプレス、請求には人間の介在が存在しない。人が介在する所は、生産と配送のみ、それも物理的な給紙、仕上げ、そして完成品の配送のみに限定される。
ライトサービス・ワークフロー
ライトサービス・ワークフローは、いくつかの停車駅を省く。セルフサービス・ワークフローで処理しきれないが、フルサービス・ワークフローより手間がかからないジョブを流す。特に重要なのは、見積の部分が割愛されることだ。このジョブは標準化されており、プライスリスト=価格表で対応できてしまうので、営業担当者やカスタマーサービス担当者は、見積もりを行わず、価格を迅速に提示することがでるのだ。
ライトサービス・ワークフローの“人間停車駅”は以下の通りである。
見積もり算出の業務を割愛することで、お客様に価格を迅速に伝えることができ、受注の確度を上げることができる。見積もりの計算を本当に必要な場合に限定することにより、戦力をもっと重要な案件に注力することが可能。印刷会社によっては、見積計算を自動化することにより、お客様自身で見積もりを取得し、その直後にファイルアップロードすることにより、労務費削減を実現している。
フルサービス・ワークフロー
最後のワークフローは、印刷業界で最も一般的な路線といえよう。殆どのジョブが人を介在するので、労務費がかかってしまう。 複雑で付加価値の高いジョブに適しているが、ワークフローのコストはとても高い。人が介在させるたびに25ドル~50ドルの労務費が係ると言われている。印刷する前に4つの停車駅があれば、印刷する以前で、既に100ドル~200ドルになってしまうのだ。
フルサービス・ワークフローの“人間停車駅”は以下の通りである。
人が介在するたびに25ドル~50ドルかかってしまうフルサービス・ワークフロー。印刷会社のジョブは、益々、件数が増え、金額が小さくなり、納期が短くなる傾向にある。ジョブの種類をセグメント化し、そこに技術を適用して、コストのかかる人間停車駅を少なくすれば、労務費を削減することができるだろう。もちろんこれは簡略化した見方で、実際の印刷に必要な細かい点はそれぞれ存在する。
これを念頭におくと、事業戦略を考えるときにはソフトウェアが欠かせない。印刷会社が競争力を保つには、かつては人を利用して行ってきた業務を、ソフトウェア技術で置き換えないといけない。人の時間は最も貴重なリソースで、価値のある業務へとシフトしていくことが重要だ。反復作業しか伴わない業務はソフトウェア技術の方がはるかに効率がよい。人材こそが企業の差別化要因であることに変わりは無い。どのようにその貴重な時間を使い、どの分野に用い、それが顧客にどうメリットを出せるのか、ということが、成功への道程である。
By | Jennifer Matt |
Published | October 20, 2014 |
原文 | http://whattheythink.com/articles/70964-every-print-job-doesnt-deserve-estimate/ |