デジタルの限界
残念なことにデジタルの夢の世界は実現していない。印刷はまだ葬られていない。それどころかここに来てデジタルの限界が見えてきている。
まずは、データは万能ではない。データはビッグであればよいわけではない。今やデータがビッグになるのは簡単だが、それを実際に活用できるデータにしていく方が遥かに重要である。さらに重要なのはそのデータから、意味ある、実施可能な策を導く事であろう。AIも機械学習も、一時期の「なんでもできるから人間が要らなくなる」的な話から、現実的に、出来る事、出来ない事、が見えてきた。もちろん巨大なデータの選別、振り分け、紐付け、といった網羅性を要求される内容はAIが圧倒的に強い。だがAIが何かを理解しているわけではない。シャレも冗談も通じない、ましてやフェークを見抜く事は困難である。
昨年のDMA &THENの報告会(https://podi.or.jp/global_contents/dma/dmathen2018_jbfa_report-2/)でも発表申し上げたが、デジタルに、そして技術に対して行き過ぎた動きを回帰させる流れが顕著であった。帰る先は「人」、「顧客」そして「印刷」であった。
蘇る「人」「顧客」そして「印刷」
ECサイトの劇的な成長を見ていると以外?なことだが、総小売業に占めるECの比率は10%未満である。
アメリカの昨年のQ4で9.9%であった。10%未満といってもギリギリで、スッキリとした右肩上がりで今年二桁を突破する事は間違いが無さそうだ。とはいえ小売業全体では依然として、そしておそらく今後も店舗が主力である。
小売全体のたった10%の売上であるがされど10&で、過剰投資気味であった全米のショッピングモールの30%を駆逐している。
しかし主力がリアルの店舗であることには変わりない。ではこのデジタルの時代に、人々が物理的に移動し、店舗を徘徊し、時間とコストを掛けながら買い物をする理由はなぜか? 見たい、買いたい物が決まっていれば、検索すればよい。なぜGoogleに尋ねないのか? Amazonで探さないのか?
(続く)
著者プロフィール
社団法人PODi 代表理事 亀井雅彦(かめいまさひこ) デジタル印刷活用をテーマに、印刷機メーカーや印刷会社に対して、人材の育成および教育・コンサルティングサービスや各種普及啓発活動、イベント、セミナーの開催を実施。 |