Fujifilmはインクジェットでの軟包装印刷を可能にするEUCONを発表(WhatTheyThink?)

軟包装印刷とインクジェットの間の溝は広い。しかし橋はかけれるようだ。Fujifilmは革新的な LED-UVインクジェット機を drupa 2016で発表し道を示した。

LED-UVインクジェット機

インクジェットはラベルやその他多くの印刷物を苦も無くこなしてきたが、軟包装の印刷には険しい坂を上らねばならない。

インクジェットの限界はここでは明らかで、水系のインクは軟包材の表面に接着しないのだ。UV乾燥インクはこの問題を解決するが、これまでのUV乾燥では、熱、臭い、安全性の問題で食品包装には問題が残った。

品質と強度に関して言えば、フレキソ印刷―軟包装印刷では支配的な技術―がインクジェットの参入の壁をさらに高くしている。

drupa 2016でFujifilmはこれら全ての障壁を克服する新しいプラットフォームを発表した。EUCONと呼ばれる機器は、現在日本でしか導入されていないが、インクジェットによる軟包装印刷が抱える課題を解決するべく設計されている。

EUCONとは“enhanced undercoating over nitrogen=窒素パージ方式.”の略である。 これには3つの要素があり、新開発のUVのインク5色セット、同じく新開発のアンダーコート用プリマー、さらに臭いと転移を大幅に押さえる酸素除去プロセスである。これらの要素と、低温で定着できるLED UVで乾燥するロール紙印刷で、最大54cm幅の軟包材を最速50mで印刷できる。

EUCONはあらゆる意味でFujiifilmの最初のラベル、パッケージ向けのインクジェット・ソリューションである。B2枚葉機であるJ Press 720Sは、商業印刷、紙器向けでdrupa2008でコンセプト展示され、2011年より市場に導入されている。 drupa 2016では、FujifilmはフレキソとUVインクジェットのハイブリッド機をラベルとパッケージ向けに発表している。また同社のインクジェット技術はHeidelbergのPrimefire 106印刷機と、もうひとつのフレキソとUVインクジェットのハイブリッド機であるHeidelberg-Gallus Labelfire 340のコア技術を提供している。

この新しい印刷機は、パウチ、バッグ、もしかしたらシュリンクスリーブをターゲットとしており、ラベルではないという点で、これらの印刷機とは異なっている。インクジェットが軟包装印刷する際の課題、インクの接着、インクの安定、そして食品安全性の保証を実現するために開発されている。

接着の問題に対するソリューションは、インクを乗せる前のアンダーコートのプリマーにある。プリマーによって、インクの滲み、剥がれ、割れ、といった問題から守り、正確なカラー再現を、吸収性が無い軟包材で実現している。

特別に処方されたCMYKWのインクが、包材の裏面に印刷、乾燥を行い、ラミネートフィルムを接着することによって、透明でかつ画像を保護してくれるパッケージのフィルムの上から正しい色と画像が認識されるのだ。この場合、見える色がまず印刷され、最後に白が印刷される。

印刷が食品に安全であるという事に、EUCONのUV inksは太鼓判を押している。. それらは、食品への転移(マイグレーション)を低く抑え、接着強度と耐熱性を強めている。それによって、パッケージのコンバージョンと包装工程における、熱シール、滅菌といったプロセスに立ち向かえるのだ。

窒素パージは、インクの射出とLED-UVの乾燥工程の間で行われ、インクの低いマイグレーション特性と相まっている。

UVインクはUVの波長光に露光されることで、乾燥、硬化され、小分子(モノマー)が連鎖構造となり大分子(ポリマー)を生成する。このポリマー生成工程が不完全であると、インクにモノマーが残留し、それが原因となって規制対象となるマイギュレーションを引き起こす可能性がある。

これまでのUVでは、酸素の存在が乾燥の工程を妨げて100%に届かない。EUCONでは、インクの表面に窒素ガスを吹きかけることにより酸素を除去してから乾燥ユニットに搬送する。

これはスナックフードの包装時に劣化を防ぐために酸素を除去する技術と同じである。 窒素が多く、酸素が無い環境では乾燥は100%の効力で、マイギュレーションのリスクを押さえこむ。 ラミネート層が、パッケージ層(当然食品向けの保護素材である)とでインクを包んで保護をする。

LED UV乾燥が出現するまでは、熱に弱い軟包材にUVインクで印刷するのは極めて困難であった。UV用にLEDで露光するシステムは、これまでの紫外線のランプに比べれば圧倒的に発熱量が少ない。EUCONは幅広いパッケージ用のフィルムに印刷することができる。

Fujifilmは現時点では、欧州、米国とは食品安全基準が異なる日本国外でEUCONを販売する計画はない。 しかしながら同社は、この画期的な印刷機を、軟包装向け小ロット印刷におけるインクジェット技術の橋頭保として、どこにでも展開する機会をうかがっている。Fujifilmは世界の市場でのEUCONの可能性を見据えている。

 

 

  

whattheythinkmini
By Patrick Henry
Published 2016年8月2日
原文 http://whattheythink.com/articles/81640-fujifilm-eucon-inkjet-flexible-packaging/

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